疼いて

鈴乱

第1話


「何をやっているのか……だなんて。君は無粋だねぇ。僕は僕の犯した過ちを悔いて、悲嘆しているのさ」


「……」


「そんな、嫌そうな目をして、僕を見ないでくれないか。僕だって、早く立ち上がりたいと思っている。早く、前を向いて進まねば……と」


「……またお前は」


「”無理をする”、と?」


 少年は、無言で頷く。


「あはは……。もう、無理は性分さ。無理をしなくてもいいと分かっていながら、身体も心もはやって仕方がない。何かしていないと落ち着かないんだよ」


「お前は人間だ。そんなに動いてばかりいたら……倒れる。倒れたら……介抱するのは俺だろう」


「あぁ……、その点は申し訳ないと思っている。だから、僕も一応きちんと休もうとしている。しているんだが……」


 青年は自らの右手を見つめる。その手は何かを探し求めるようにひどく震えを帯びていた。


「腕が、はやく捕まえたくて仕方ないようでね」


「あいつか?」


「そう。僕が手放してしまった……彼さ」


「……お前も難儀だな」


「……君も、でしょう?」


 そう言って青年は笑う。


「僕たちは、きっとずっとこうなのでしょうね。いつまでも何かを追っていたい僕と、その僕を放っておけない優しいあなた。……いつも感謝していますよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

疼いて 鈴乱 @sorazome

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る