キャバクラ嬢に恋をして
沈黙は金?
第1話
僕は、一時期キャバクラによく足を運んでいた。甲府と大宮の。甲府の方は、高校時代の友達Hが甲府に住んでいたので、遊びに行くと必ずキャバクラSに行っていた。そこで、僕は当時19歳のさゆりちゃんというキャバ嬢に恋心を抱いてしまった。カラオケで安室奈美恵のCan you celebrate? なんかをさゆりちゃんと一緒に歌って悦に入っていた。今考えると馬鹿丸出しだった。言葉巧みに口説いても、さゆりちゃんは落ちなかった。
僕が、さゆりちゃんのことに思いをいくら募らせても、僕の手に入らないと気付くまでかなりのお金を費やした。
そう、僕はキャバクラでの遊び方を知らなかったのである。あの賑やかな店内で、僕は自分を見失い舞い上がってしまっていたのである。若気の至りとはこういうことをいうのであろう。
余談なのだが、甲府のキャバクラに通っていた時期と大宮のキャバクラに通っていた時期は全く同じ時期であった。山梨と埼玉で並行して夜遊びをしていたのだが、今考えてみるとどこにそんなお金があったのか全く分からない。その頃、懐の中が温かかったとは到底思えない。金がなくても上手く工面すれば、豪遊は出来ないけれど細々となら遊ぶことは可能である。そんなことを過去の自分が証明していると僕は自負している。
では大宮では、どんなことが起きていたのだろうか? 大宮駅東口にPというキャバクラがあった。怖そうなお兄さんが店の前で呼び込みをしていた。僕は、友達のSとその呼び込みに促されてキャバクラPに入店した。フリーで入ったので椅子に座るとキャバ嬢が2人僕と友達の横に座り水割りを作ってくれた。僕の隣には、愛ちゃんという当時22歳のくりっとした目が印象的でキュートな女の子が座っていて、たわいもない会話を楽しんでいた。すると、愛ちゃんが突然、「携帯の電話番号教えて」と言ってきた、僕は、「どうして?」と訊き返すと「電話番号交換したいから」と愛ちゃんは言った。これは、一体どういうことなんだ? と僕は思った。個人情報をこのような所に晒して良いものかと。そんなことが頭をよぎったけれど、愛ちゃんが番号交換しようとせがむので、僕は交換してしまった。少し不安だったけれど。
ボーイが、延長するかどうか訊いてきたので、友達のSに目で合図して店を出ることにした。1時間しか店にいなかったので、料金は2人で1万円くらいだった。ぼったくられなかったので、僕はホッとした。
数日後、携帯に愛ちゃんから電話があった。「今日遊びに来ない?」と言うのであるが、僕はそんなに金を持っていないので断った。しかし、「来てよー、来てよー」としつこいので、なけなしの3万円を懐に入れて僕は店に行った。愛ちゃんを指名して店に入り、愛ちゃんが「待ってたよー、ダーリン」と言って僕に抱き付いてきた。
この日は、指名料と2時間いたので3万近くの料金だったので何とかなった。当時、僕はコンビニの深夜のアルバイトをしていた。そんなに、余裕のある生活をしていなかったのであるが、度々愛ちゃんが営業の電話をかけてくるので、渋々店に行っていたのだが、愛ちゃんと同伴出勤するようになってから僕は、愛ちゃんに恋心を持つようになってしまった。それで、店のイベントがあるときは必ず愛ちゃんから連絡があった。僕は出来るだけのことをして、お金を工面して愛ちゃんに会いに行った。 僕の気持ちは、愛ちゃんと一発やるまでは後には引けない状態になっていて、何とか口説き落とすために愛ちゃんの横では饒舌になっていた。
しかし、今となっては当然のことであるが、二人の関係は全く進展しなかった。愛ちゃんが、僕のことをお金としか見ていないと気付くまでにかなりのお金が費やされた。が、金の切れ目が縁の切れ目という言葉通り二人の関係は、急激に冷え込んでいった。そして、愛ちゃんの誘いに、僕は従うのを辞めたのである。この不毛な努力と出費に僕は後悔の念を抱いた。
こうして、僕はキャバクラと呼ばれるような店には行かなくなった。キャバクラを僕とは違った、お金持ちの利用者はもっとゆとりのある遊び方をするのかなと思うのだけれど、僕にはそのような遊び方をする余裕がなかった。しかし、キャバクラというところは僕にとって桃源郷であったということは、ゆるぎない事実なのである。
キャバクラ嬢に恋をして 沈黙は金? @hyay
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