悲報、魔王俺氏、メ◯カリで売られる。〜値段は398の模様〜

たつのおとしご

第1話 魔王様絶体絶命!

 悪野麻央あくのまお16歳高校生、俺は魔王である。そして今俺は絶体絶命の危機である‼︎


 ……っと言っても、諸君らにとってはいきなりで何を言っているか分からないだろうから今から一から説明しようと思う。


 一応言っておくが、これは別に厨二病を拗らせた悲しい少年の妄想ではなく、紛れもない実際の出来事だ。勘違いしないで聞いてもらいたい。


 俺は生まれた瞬間から魔王だったわけではなかったと思う。少なくとも、子供の時は普通の子供だった。変に精神年齢が高いわけではなければ、可笑しなものにハマっているわけではない。普通に泣いて普通に母乳を飲んで普通に漏らす、そんなただの子供だった。


 さて、そんな俺が魔王の力に目覚めたのは小学校6年生の時だ。


 あの日、俺は信号無視をしたトラックに轢かれそうになった。気づいた時にはトラックはもう目前で、避ける暇もなく俺に激突する————かに思われた。


 しかしそうはならなかった。驚くべきことにそのトラックは俺に当たる直前で突然静止したのだ。まるで何かにエネルギーを奪われたように。もちろんトラック運転手が奇跡的にブレーキを踏めたわけじゃなかった。


 その瞬間、俺の頭に流れ込んできたのは大量の魔王に関する情報とその力について。理解した、俺がそのトラックを止めたのだと。そこで初めて俺は魔王として生まれたのだ。


 ただ、魔王になったからといって、大きく何か変わるということはなかった。一つあるとすれば世界に関する知識を豊富に取り入れたことで精神年齢が少し上がったことだが、それだけだった。


 魔王の力もあの事件以来ほとんど使わなかった。というのも、この時点で勇者がいるであろうことは予測がついていた。というか、魔王が居て勇者がいないのはおかしいだろう。もし俺が魔王ということが知られれば勇者が襲ってくるかもしれない。俺は別に戦いなんて野蛮なことはしたくないのだ。


 なので、俺は出来るだけ力を見せず一般人として生きることを決めたのだ。それからは普通の男子学生らしく、それなりに中学校生活を楽しんで卒業した。


 さて、そんな俺に事件が起きたのは高校生活初日の入学式の日である。俺はその日初めて勇者と出会った。勇者は俺が魔王だと分かるとすぐに俺に襲いかかってきた。


 その姿を見て、本当にここは現代日本なのか?とは思ったが俺はそれを冷静に対処してみせる。俺が一度も鍛錬なんてしたことは無かったが、魔法は色々遊んでいたのでかなり上手く扱えるようになっていた。


……まぁ、元々勇者より魔王の方が肩書きとして強い可能性もあるかもしれないが。


 結果的に勇者は一旦引いていった。去り際になんとか誤解であることを説明しようとしたが無理だった。俺はもう一度なんとか話せないか、と思っていたが、翌日その勇者から俺に手紙が届くことになる。曰く、


『魔王、ここで待っている!』


 という文章とともにマップを印刷した紙が入っていた。俺はとりあえず勇者がそこまで強くないのは分かっていたためどうせ逃げられるだろう、と思い、そこに出向いた。目的はもちろん話し合いでの解決をするため。少し鼻っ柱を折ってしまえば話くらいは聞いてくれるだろう、と。


 しかし結果として、俺の考えは失敗に終わる。


 俺がその目的地に着いた時、そこにはおよそ五十人ほどの人間が待機していたのだ。年は小学生からヨボヨボのおばあちゃんまで、性別も男女問わず、おまけにオカマまでいた。


 ……今でも覚えてるよ、あの筋肉マッチョのメイク野郎は忘れられない……。


 そいつらは俺が現れた瞬間、団長らしき人物の後ろに綺麗に整列した。


「魔王よ、先日はうちの新米がお世話になったようだな!だが、今回はそうも簡単にはいかないぞ‼︎俺たちはお前を倒す‼︎」


 団長らしき人物のその言葉に後ろから「オー‼︎」と野太い声がする。


 ……勇者野蛮すぎやせんか?


 そう思いながらも俺は全く状況を把握できていない。だから俺はその団長(仮)に質問することにした。


「あの……、すこし質問してもよろしいですか?」

「よろしい、許そう」

「えーーっと、じゃあこの中で勇者だよー、って人手を挙げてくれません?」


 全員が手を挙げた。……まぁそうだよね。なんか全員キラキラしてる剣持ってるんだもん。


 ……ってか勇者ってこんなにいるの?今まで俺以外で魔王の人見たことなかったぞ?50vs1って不公平じゃね?それ勇者やることなの?


「もう質問は良いな?」

「いや、あのえーっと、俺別に今まで悪いことしたことないし————」

「全軍突撃ーーーー‼︎」

「いや、話聞けよ‼︎」


 かくして、俺は数の暴力によって簡単な捻じ伏せられてしまった。


 これではどちらか勇者か分からない。まぁ、それがどちらにしても俺が命の危機であることは変わりないので俺はそこから何とか命乞いを開始する。俺が今までどれだけ悪業をしなかったか、そしてどれだけのボランティアをしたのか、それを今まで学校生活で培ったディスカッションスキルを全て駆使して伝えた。


 結果的にその努力は実り、なんとか命だけは助けてもらうことができたのだが、かといってこのまま俺を放っておくわけにもいかないらしい。


 そんな中出た案が……


「よしこいつメ◯カリに出品するか!」


 メ◯カリ出品であった。


 ……What?ニホンゴ、ムズカシイ、ハナシノケイイ、ワカラナイ。ワタシニホンゴワカリマセーン。


「いや、なんでそうなるんだよ!犯罪だろ!人身売買‼︎」

「いや大丈夫だ、今回出すのは勇者専用のメルカリだ、一般人に渡る可能性はない!」

「そういうことじゃねーよ‼︎」


 俺が見てきた今までの勇者の行動全て勇者に反するものなんだが?


 しかし、俺の抵抗虚しく、着々と俺の出品準備が進んでいく。


「値段とかどうする?」

「でもあんまり高すぎるとみんな買わないよ?」

「あら、そもそも魔王を欲しがる勇者なんていないでしょ」

「んー、でも……、取り敢えず安くしとくか398くらいで良いだろ」


 人の値段を勝手につけんなよ‼︎というか、安すぎだろ!俺サンキュッパかよ!


 こうして、俺は今絶対絶命の立場に置かれた。さて、ここまで聞いてくれた諸君らなら分かるだろう。完璧な理不尽である。


 へ?説明が長いって?では簡潔に説明しよう。言うなればそう、


 悲報、魔王俺氏、メ◯カリで売られる〜値段は398の模様〜



おまけ


商品名 (まだ)善良な魔王

値段   398円

商品の説明

(まだ)善良な魔王です。たまに魔法を打ちます。顔は比較的美形ですが、気が強いため愛玩動物目的での購入はご遠慮ください。噛み殺される危険性があります。腕に自信がある人のみでお願いします。


カテゴリー: 魔王

ブランド: 自称人類(らしい)

商品の状態: 目立った傷無し、聖剣での切り跡あり

配送料の負担: 本人が頑張って届けられます

配送方法: 徒歩およびダッシュおよび飛行(本人)

発送元の地域: 魔王の家

発送までの日数: 頑張れば多分3時間くらい




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