第一章 僕と異世界と不思議な迷宮
1 竜になった僕
僕は夢も目標もないまま、女の子を助ける為に車に轢かれた。
それはもうドンといってグチャッと死んだ。
なのに………
「なんだこれぇぇぇええ!!!!!!!!!!」
僕の絶叫が辺りに木霊する。
「えっ? 何これ!? 生きてるのか?」
現在の状況に震えながら、僕は何故か小さな竜になっている自分の身体を触っていく。
背中には申し訳程度のサイズをした翼が、腰の方には尻尾があり、身体は鱗で覆われ、腕? 足? の指の本数は3本で爪は鋭利に尖っている。
そう、今の僕は人間ではなく竜。
竜、ドラゴン、いやドラゴン!?
「何が……一体何が起きているんだ!!?」
■◆■◆■◆
いやいやすまない。
先程は見苦しい姿を見せてしまった、とまあそんな事はさて置き、色々と分かった事を整理しよう。
まず僕はもう完全に竜。
言い訳のしようがないくらいの紛うことなき竜の姿になっている。
勿論こうなってしまった理由は分からない。
ただ心当たりがないかと問われると、一つだけもしかして? ってなるものがある。
それはあの交通事故だ。
人間だった頃に輪廻転生という仏教の言葉があった。
僕は無宗教だったから詳しい意味は知らないが、魂とは何度も生死を繰り返し生まれ変わっていくみたいな意味だったはず。
つまり交通事故で死んだ僕の魂が生まれ変わって、竜になったということだ。
勿論確証はないが、そう考えると納得がいくというか、少し心が楽になるというか。
取り敢えずは、前世の記憶を持って竜に生まれ変わった、ということにしておこう。
そして次に現在地。
ここはどうやら洞窟のようだが、少し気になるのは周りの壁が洞窟の中にしては違和感があり過ぎるという事ぐらい。
苔や蔓に覆われてはいるが、それらを取ってみるとなんとびっくり、レンガに近い形をしたものが積み上げられて壁が出来ていた。
「人工物かな? まあよく分かんないや」
とにかく僕は、そんな人工物っぽい壁に囲まれた小さな場所にいる。
目の前には真っ暗な一本道。
そして床や壁に耳を当てた結果、何も音がしなかったので近くに誰かがいる気配はなし。
助けは呼べなそうだ。まあ呼んだとて、みたいなところはあるが………
「さてどうしたものか。取り敢えずは目の前の道を進むしかないよな」
致命的なまでに少ない情報を補うには、やはり行動あるのみ。
ここはもう調べ尽くしたし、僕の竜の身体も生きてればそのうちなんとかなるだろう。
翼と尻尾はまだあまり慣れないけど。
「でも真っ暗は怖いなぁ〜」
■◆■◆■◆
どのくらい歩いたのかは分からない。
それでも体感十キロ近く歩いた気はする。
人間だった頃の僕なら、もうヘトヘトで歩くのを止めて何処かで休んでいただろう。
だが今は違う。
止まるどころか、前々と加速する勢いで足が動いていく。
それは何故なのか、理由は簡単。
興味が、好奇心が止まらないからだ。
つられて自然と足が動いていく。
何故、興味と好奇心が止まらないのか。
それも理由は簡単。
ここは、この洞窟は、この世界は、地球でも日本でもない。
まあ僕が竜の時点で薄々気が付いてはいたのだが。
とにかくここは、人間の頃の世界とはかなり違った世界。
モンスターや魔法が存在する異世界だったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます