いつか繋がる戦い

訓練を始めてから約二年程が経った。

 ほぼ毎日師匠と十戦程戦いを続けて、一年経ったくらいから、一本取れる様になった。

 さらに半年を過ぎた時には三、四本取れる様になったが、最近は良くて二本と言ったところだ。

 そして、、、今までに一度も師匠相手に勝ち越した事が無かった。

 しかし、自分でも分かる、この二年間でかなりの実力がついたと言う事が。


 

 「よし今日もやるぞ」

 「よろしくお願いします!!」


 結構この二年で俺自身も変わって来た。

 この村に俺は相当心を開いていた。

 新たな冒険者の誕生に村の人が皆俺を応援してくれる。

 冒険者が少ない事もあって、カードを見せて優待を受けれる事がほぼ無いが、師匠のおかげもあってか、ご飯も宿も一度も硬貨を支払わずに生活をさせてもらっている。

 師匠も冒険者なのに、この二年間ほぼ、俺との訓練に時間をあててくれている。

 

 「そろそろ俺から半分取ってみろ!」


 そうして今日も試合が始まった。

 師匠に教えてもらった、相手の攻撃をよく見てからカウンター、受け流し、大きい一撃じゃなく、小さく多くを意識して、確実に削るんだ。そしたら、隙が見えてくる。


 それだけを俺は二年間も続けて特訓して来たんだ!


 しかし、この教えは師匠から授かった物だ。

 その道の歴が雲泥の差がある。

 俺と違ってミスがない。無いわけではないが、そのミスが僅かすぎる。

 俺と違ってそのミスを釣りにしてカウンターを突かれた事もある。


 「うおおっ!」

 「まだまだ甘いぞ!」

 

 師匠の間合に入ってしまった。

 少し距離を取られてしまうと、振り出される剣を俺は避けているつもりが、毎回当たってしまう。

 この間合に入って俺は一度も勝てていない。恐らく得意な状況に俺は誘導されているのだろう。

 なら、この距離を一気に詰めるしかない!!


 「くそっ」

 「ハハハ 今のはいい動きだったな惜しかったぞ!」


 結局俺の剣は届かなかった。

 師匠の意表は上手くつけていた。しかし、慣れてない急発進は遅かった。俺は自分の想像以上に動けていなかった。

 しっかり、対応されてカウンターを受けた。


 「どうしたら俺は師匠に勝てるんですか」

 「……まあ師匠は偉大だからなぁ」

 「何ですかそれは」

 「そんな事は終わってからだ!さあ次行こう」

 「はい!!!」


 その後残りの九戦したが、最初の事が頭の中に残ってしまい、今日は一本しか取れなかった。くやしい。

 でも、今日はここからが本番だ。戦績は最悪だったが、勝ち越しへの何かを掴めた様な気がした。

 

 受け流しては駄目なのかもしれない、、、いや、実際は良い手なのだろうが、師匠には通じない。

 師匠も同じ様な動きをしているが、ワンパターンでは無い。その後の動きが読みにくいんだ。

 そして俺と違い、戦闘中に俺に話しかける余裕すらある。本当に俺は強くなっているのだろうかと思う時もある。

 どうすれば良いんだ?


 「そうかこっちから誘い出せばいいのか

  そうと決まればその練習をすれば良いんだ。」


 そうと決まれば早い、いつもの受け流しながら相手を確実に捉える様な素振りから、対師匠専用の構えと、誘い出しの動き、剣舞を練習していると、いつもは黄昏ている様に眺めていた師匠が、一年ぶりに話しかけた。


 「何だその剣舞は?俺専用か?」


 バレてた。流石は師匠だ。俺の考えてる事なんてお見通しって訳か。


 「はい。そうです。」

 「その動きはやめろ」


 何故だ?師匠はいつも俺の自主性を尊重していつも何も言わなかったのに、遂に俺が師匠に勝てる唯一の道筋を見つけたってのに何で?

 

 もしかして、その動きをされると俺に負け越してしまうからやめて欲しいのか。そうに決まってる。

 

 「何故です?」

 「その動きに意味は無いぞ」

 「貴方に勝つために必要なんです」

 「お前の最終的ゴールは俺に勝つ事で達成なのか?

  なら良いんだ、、、

  でも、そうじゃ無いだろ?言ってみろ」

 「はい 強くなりたいです。」

 「そうだ 俺に勝つ事が強い事の証明では無い

  俺に勝ってようやく一人前の冒険者ってとこだ。」


 珍しく俺に本気で話してくれた。

 いつもは声高々にふざけ半分で話すくせにちゃんとするとこはちゃんとする。

 そんな所に俺はこの人なら信じて良いって思ったんだろうな。

 気を取り直して、その動きは頭でイメージする事だけにして、今日は一歩も動かず集中力を途切らせず、素振りをした。

 頭の中で仮想の師匠を作って、攻撃に即反応。

 剣のスピードはもう負けていないくらいには速くなっている。

 夜は食べに行くとのことなので風呂に入ってさっさと支度をしなくては、、

 

 「そろそろ勝てるんじゃ無い?」

 「おお!久しぶりだなルド」

 「そうだねここ数ヶ月レイは真剣な表情をしてたから話しかけるのが申し訳なくてね」

 「本当は声が届かなかったんじゃないのか?」

 「いやいや違うよ本当にレイの頑張ってる姿を見て僕は本当に信じてよかった。僕の代わりがレイ、君で良かったって思ってるよ」

 「おいおい、別れの最後の言葉みたいに言うなよ」

 「………」

 「……」

 「…」

 「おい、何とか言えよ本当に最後の言葉なのか?」

 「ん?全然そんな事ないよなんなら調子がいいくらいだ」 

 「心配させんなよ」

 「いいじゃないか少しくらいは

  最近のレイは余裕が無いよ、焦らないで余裕を持って、、ね」

 「お前、女見てーだな」

 「よく言われた」


 でしょうね。

 流石に俺の事を親身に考え過ぎだろ。母親かって位、心配症だ。

 でもなんか久しぶりに会話が出来て心が温かくなった。

 

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