隣の鍛冶村に着いた。

 前の町に比べると少し、いやかなり小さいと言えよう。

まあ、新たなスタートを切るのに小さい村ってのはなんか良いな。

 かの有名なアニメも始まりの地はこのくらい何もなく、のどかな感じだからな、

 なんか俺、アニメとかの世界に入ってたりして?

 いやそんな事は無いか、もし入ってたら、もうちょい良い境遇で圧倒的なスキルをもらって俺ツエー系で無双して、ハーレムを築いて、異世界サイコーって感じだけど、まあそんな展開は訪れるわけないか、、、


 「いい雰囲気だね」

 「そうだな、俺の出身地はここに決めた」

 

 少しぶっ飛んだ俺の言葉にルドは反応が無かった。

 ちょっとふざけ過ぎたか?いやいやそんな事は無いだろ、これはボケって事くらい、互いにわかり合ったルドなら理解してくれるだろ。


 少し村を歩いてみるが、狭いので、あっさり村を一周した。

 右見ても左見ても、剣を作ってたり、防具を作ったりしている。

 村ガチャは当たりの様だ。


 「おやおや見た事ない顔じゃね、冒険者かい?」

 「え、ええそんなとこです」


 一応俺も冒険者だ。

 俺自体は一度も任務自体こなした事は無いけどね、

 話しかけてくれた御老人も、昔は冒険者だったそう、憧れで初めて見たものの現実はそう甘く無かった。怪我も多くなるし、始めたては依頼の成功報酬も少ないので、すぐに挫折して、今の鍛治職人になったのだそう。

 かなり幸せそうに見える。俺も冒険者やめて鍛治職人になるか?今なら、天才若手鍛治職人としてもてはやされるかも?

 

 何を言ってる、まだ冒険者諦めるのは早い。

 死ぬ間際で後悔しろ俺。

 死ぬその瞬間まで夢を追い続けろ。


 「歩いて来たとなるとゾーラ街の子かい?」

 

 ゾーラ街?分からんけど多分俺の前いたとこの名前なんだろうな、間違えると困るし一応ルドの反応を待ってるか


 「………」

 「………」

 

 あれ?

 反応が無いぞ?大体、俺が分からなそうな質問をされた時はすぐに答えてくれたのに今回は何も言ってくれない。

 困ったな、でも徒歩圏内だから、その街であってんだろ。


 「はい」

 「もしかして、君……」


 え?

 もしかして、俺の正体知ってる?

 悪評がもうここまで届いてる?そんな事あるの?

 スマホとか無いのに?


 「逃げ出して来たのかい?」


 おっ この人勘がいいな正解だよ。前の街から俺は逃げる様にここに来た。

 でも理由までは知らなそうだ。

 どうするか、武器が欲しいのでこの村に来ましたとかで嘘をつくか、でもこんな図々しい奴に武器なんか渡してくれないかも?


 それなら、弱者アピールしておいて同情をされる方がマシだな。


 「ええ、恥ずかしながらそんな所です。」


 俺は頭を抱え腰低くかしこまる。すると、


 「そうかいそうかい安心なさいここは君を責める人はいないから」

 「あ、ありがとうございます」


 いやー最高の洗濯をしてしまった。

 我ながら完璧な計画。俺も事実しか言ってないわけだし?何も悪く無いね。

 それにしても良い村だな。歩いているだけで周りの人から元気な声で、話しかけてくれる。前みたいな殺伐とした感じじゃなくて、ほのぼのとしている。

 ここは冒険者自体少ないんだろう。前は冒険者同士の争いをしているのが一日しかいなかったのに何回か目撃したし、何かと必死なんだろうな。

 俺はまだ若いし、少しずつ努力していこう。

 少しずつだけど、他の人よりも努力しないと追いつかないそれくらいは分かる。昨日争った奴に本気で挑んでたら俺の命はなかったのかもしれない。


 「この村でカードを新しく作らない?」

 「お?さっきまで喋らなかったのにどうしたんだ?急に」

 「……」

 「無視か?そんなに俺の話を聞きたく無いのか?」

 「そんな事じゃ無いよ。ずっと喋ってたよゾーラ街の時も出身地をここにするって言った時もレイに僕の声が届かなかったんだ。」

 「え……」


 前にそんな話をした様な気がする。

 ルドの存在が少しずつ薄くなっているって事を、こんな所で再度気付かされるなんて、もしかしたら俺がルドといれるのもそこまで長くないのかも知れない。

 そう考えるだけで少し寂しくなってしまった自分がいた。


 「話戻すんだけど、新しくカードを作ろうここで、それでもう良いんじゃ無いかな?」


 そういう事か、カードを作り替えるだけで昨日の事件は俺じゃ無いって証明もできるのか、名案だな。採用!!

 決まれば行動は早かった。

 カードがあるだけで色々と便利になるから、すぐに作ろう。

 

 「無い、、どこにも作れる場所が無い」


 小さな村な事が盲点だった。どこに冒険者ギルドがあるのかが全然分からん。


 「もしかして、ここには無い?」

 「そんな事はないよ絶対。」


 ルドが言うには必ずあるのだそう。

 冒険者は誰でもなれるから鍛冶村でも、必ず存在するのだ。さっき会った老人も元冒険者だったしな。

 あ、聞けば良かった。


 


 それからもう一周した所で、埒が開かないと思い、聞いてみるとあっさり、教えてもらえた。

 何をしているんだ俺は、自分に分からないのは誰かに頼れ、そして次は自分が困った人を助けられる様になれ!それがあるべき世界の形なんだから。


 「冒険者カードを作りたいんだが?」

 「はい、冒険者カードですね元々持っていたカードはありますか?」

 「無いです。」

 「新しく作られるのですね」


 少しグダついたが、何とか完全に一新されたカードを作る事ができた。

 名前も「レイ」だけにした。少しカッコいいと思った。




 「おっ 冒険者だ」


 隣の依頼を受ける場所から、声が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る