第7話
窓から日差しが差し込んでいた。
外ではスズメが鳴いては
飛び立つ音が聞こえる。
ここはアパートの一室。
颯太の部屋だ。
いつものベッドの上、
設定を消し忘れたアラームが
平日と同じ時間に鳴っている。
うつ伏せ寝で寝ていた颯太は、
寝返りを打っては
動いた瞬間に床に落ちたスマホに
手を伸ばして
アラームを消した。
休みだから朝遅くまで寝ていたかったのにと
後頭部をガリガリとかく。
体を起こすと、
ふとんに抵抗を感じた。
横を見ると眼鏡を外した美羽が、
スヤスヤと気持ちよさそうに
寝ている。
「ちょ、待って。
待て待て待て…嘘だろ?
何で部屋に連れ込んでんだ、俺。」
独り言をつぶやく。
自分の頬をつねっては
夢じゃないかと確かめた。
現実だったことに
放心状態だった。
ハッとひらめいて、
見られてはいけない娘の
ここに遊びにきた時に使う
動物のフィギュアのおもちゃや
家族の写真立てをパタンと
倒した。
(でも、もう遅いのか。
見られてるかもしれない。
その時はどうするか…
それにしても
なんで俺の昨日の記憶が
ないんだ。ちくしょー。)
Tシャツとハーフパンツの姿で寝ていた
颯太は部屋の中をうろうろしていた。
「あれ、もう起きたの?
休みなのに早いんだね。」
目をこすりながら起きた美羽。
後ろを振り返っては、
美羽のそばに
近づいた。
「覚えてないんだけど、昨日のこと。」
「え、ほんと?
飲みすぎた?」
ふとんをよけると、
下着姿のままに驚いて
すぐにふとんをかけて隠した。
颯太はすぐに目を塞いで
後ろに振り返る。
「見てないから!」
「見てないからって…今更だけど…
恥ずかしいは恥ずかしいよね。」
後ろ姿のまま、かに歩きで
床に落ちた脱ぎっぱなしの服を
拾っては
ぐいっと腕を伸ばして手渡した。
目を合わせようとしない。
「あ、あと!
申し訳ないんだけど
これから来客があるから…。
その、あの…。」
「あ、そうなんだ。
ごめんなさい、今帰る準備するね。
えっと、服はこれとこれかな。」
美羽は後ろ向きの颯太を横目に
急いで服に着替えた。
颯太はクローゼットに行っては、
小洒落た服に着替えては、
寝癖を整えて鏡を見ながら
くしでとかした。
女子よりも女子力が高い気がすると、
洗面台に並んで
化粧をする美羽。
颯太は棚に置いていた香水を
軽く振りかけた。
「それ、いいね。
ムスクの香り…。
私、制汗剤しかつけないから
香水もいいね。」
「つける?」
「うん。」
手首に振りかけては
両手で首に擦り付ける。
「香水ってこんな感じでいいんだっけ?」
「そうそう。」
「何か.颯太さんと共有できて
嬉しいな。
同じ香りだ。」
にこにことご機嫌な表情を
見せては、ソファに置いていた
バックを肩にかけた。
「んじゃ、
また会えるよね?」
「ああ、またそのうち
連絡するわ。」
左手を後頭部の後ろにあてては
恥ずかしいそうに言った。
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