第3話 飛翔する球体

早朝の汽笛


      昼間のパレード


    誰もが待っていた。この日を


飛行士の制服を来た青年は告げる。

「この気球はすべての者の思いを乗せて浮かぶ」


そして見よ!と彼は高々に宣言する。


黄昏に向かって浮かび上がる一つの球体。

下の船首は重くもゆっくりと高度を上げていく。


夕暮れの太陽。重なる気球。


時に人は希望を。時に人は怨恨を。

時に人は愛を。時に人は憎悪を。

時に人は夢を。時に人は慈しみを。

時に人は未来を。時に人は明日を。


あらゆる思いは気球に熱を与え上昇気流を生み


遥か彼方の誰も知らない辺境に辿り着く。

それを受け取り継ぐものが思いを昇華する。


どこまでも身勝手にどこまでも未練がましく


どこまでも綺麗に。この一瞬の夕景に手を伸ばす。


この一瞬の輝きに心が近づく今を見つめる。


青年はどこまでも今を見つめる。

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気球 青色 モヨウ @kujira_k

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