夢想家の妄想で無双化できるか
和谷幸隆
第1話 死んだら驚いた
「ここまでか・・・」
ロード級ドラゴンを前に、既にパーティーの他のメンバーは全滅していた。
Aランク3人 Bランク5人 臨時のパーティーだったが通常のドラゴンだったら問題無く倒せたはずだった。
だが突然のダンジョン変異によってドラゴンは1ランクその力が引き上げられた。
それでも戦い方次第では勝つことはおそらくできた。
Bランクの3人がドラゴンロードの咆哮でいきなり逃げ出すとは思わなかった。
背中を向けた3人に放たれたブレスは1撃は3人の命だけでなくパーティーの戦意を刈り取った。
半壊した戦力でそれでも抵抗を試みたが最後はジリ貧。
最後に残った俺もマナはほぼ枯渇し剣も既に折れている。
アニメやゲームだったらここから覚醒したりヒーローが救いに来るんだろうが現実はそんなに甘くない。
15歳からダンジョンに入り24年。必死に頑張りAランクまで到達したが上には上がいる。
昔一緒に組んでいたメンバー達もAランクとランクの上では差は無いが実際の能力はまるで違う。
その後ろではない。横に並び立ちたくて20年以上どこのクランやパーティーにも所属せずソロで通した。
「届かなかったか・・・でもそう悪い人生じゃ無かったな。」
死ぬ前に走馬灯のように人生を振り返るのは本当だったんだなと変なところに感心し、
笑っているところにドラゴンの爪が振り下ろされ俺の意識は消えていった。
「お***、だいじ**!?」
「おい!大丈夫か?」
耳鳴りは少しずつ治まり、身体をゆすられ大きな声をかけられて俺は意識を取り戻した。
・・・意識を取り戻した?
死んだはずでは?死んでないとしても大きな怪我も無ければ病院にいるわけでも無い。
まさか死後の世界ってオチは無いだろうがいったいどういう状況だ?
「すみません、大丈夫です。」
ひとまず声をかけてきた男性に適当に返事を返す。
ゆっくりと起き上がり身体が大丈夫なことを確認して立ち上がる。
「ああ良かった。それにしてもダンジョン変異してヤバいと思ったら誰かが攻略してくれて助かったな。」
(あの状況でドラゴンロードを誰かが倒した・・・?)
「貴方の思ってる変異ダンジョンのことじゃないですよ。」
まるで心の中を読むように隣にいた知らない女性が声をかけてきた。
「!?」
「何か知ってい・・・」
「まず自分のライセンスを確認してみてください。」
何を知っているか問いただそうとする前に口を挟まれる。
とりあえず言われた通り俺はダンジョン探索者のライセンスを確認する。
ライセンスには氏名住所連絡先などの個人情報は勿論、
ランク、魔物討伐数、ダンジョンの攻略実績や入退場履歴まで記録されている。
自分のスマホからアクセスしようとしておかしなことに気づく。
自分の持っているスマホが自分の物では無いのだ。
しかし自分のマナパターンで認証されアプリは問題無く立ち上がる。
そこに表示された名前は勿論自分の名前だった。それ以降の情報を見て愕然とする。
「橘樹・・・・Dランク・・・・16歳・・・・」
「16歳!?」
「大声を出さないでください。状況は分かりましたか?」
「おい、お前は誰だ!?何を知っている!?」
「周りに人も多くて、話をする場所でもないないし場所を移しましょうか。」
「あ、ああ、、、」
そもそも自分が今どこにいるかすら分かっていなかったがスマホで場所を確認し、
思った以上に街中に発生したダンジョンだったことが分かった。
10分ほど歩いてカフェに入ると、飲み物を頼みすぐに話しをしようとする。
「さっそk・・・」
「折角だから飲み物を待ちませんか?それにもう少し落ち着いた方がいいですよ。」
「・・・そうだな。少し落ち着いて状況を整理するよ。」
ふぅと息をはき、一度深呼吸する。注文したコーヒーをゆっくり飲んで味を確かめる。
「・・・コーヒーを飲んで少し落ち着けた。苦いコーヒーは良い。」
「コーヒーにまろやかさとか酸味とかいらないよな。」
「ただひたすら黒くて苦い。頭を覚醒させるときは特にね。」
「・・・聞きたいのはコーヒーの好みですか?」
意外そうな表情で女性はそう確認する。
「ああ、、、いや、そうじゃない。」
俺は改めてゆっくり女性を見る。
よく見るとかなりの美人だ。20代前半くらいだろうか。
長身に美しい銀髪のロングへア。後衛の探索者なのかなかなかの品質のローブを身に着けている。
「念のため確認しますが初対面ですよね?」
かなりの美人を前に緊張したわけではないが、つい言葉が丁寧になる。
「ええ、初めてですね。樹さん。ライセンスから今の状況わかりましたか?」
「・・・・・・」
なぜ初対面のはずの彼女が俺に声をかけてきただけでなく、
自分でも分からない状況について何か知っているようなのか。
それはともかくあまりに非現実的過ぎて分からないと思い込もうとしていたが、
ライセンスには16歳Dランクとあった。
そして自分のものでは無いスマホ。いや、今思えば昔使っていたスマホであった。
顔はまだ見ていないがまだ若い自分の手、減っているマナのキャパを考えると、
俺は16歳の時に戻ったとしか思えなかった。
目の前の女性は何を知っているのか。ひとまず俺は自分のおかれた状況を確認した。
「自分に昔流行ってたラノベのようなことが起きるとは思わなかった・・・」
「タイムリープ?回帰?つまりそういうこと・・・ですよね?」
「あ、違います。」
「え?」
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