第14話(3)
夜に動いているのはジュドーやグランだけじゃない。
今夜だけで3軒もの酒場を巡って調査している者もいた。
王宮護衛団王城区域班、通称“御庭番”の序列4位、ロバスである。
若い僧侶たちから事前に得ていた情報の酒場は、3軒とも冒険者ギルド近辺。
城下町西門の周辺は、冒険者向けの店が数多く軒を連ねていた。
中には宿屋を兼ねたお食事処や酒場もある。
ロードストリートにあるキルジョイズの酒場に比べたら規模は小さいが、
(いや、あそこがデカすぎるのか?)
初級冒険者には嬉しい格安宿が多く、閑散期といった事が無い。
「情報に目ぼしい収穫はありませんでしたが…
この地区に集中していたのが少し気になりますね。」
ここは西区で、すぐ近くの北西区は治安の悪いスラム街。
司祭のような身なりのいい者が好んで来る場所ではありません。
おそらく酒場では、
表向きは若い僧侶たちと和気あいあいとしながら、
裏では念話で何者かと情報を共有していた…。
その可能性が高い。
先日は南区の貿易センター付近にある海鮮料理の店に顔を出していた…
西区と南区、この行動場所に共通して言える事は、
どちらも城下町の門にほど近いという事。
事前に、城下町の城壁沿いは治安が良くて安全だと話を若い僧侶たちが
話したとの事ですが、西区に限って言えばそうとは言い切れないエリア。
そういう場所にも近付きやすい行動を取れるように、事前にその話を聞ける
ように話術で仕向けていたとすれば…
あのハイエルフの司祭は、かなりの切れ者という事になります。
ケイト殿に何かみやげになる良い情報を得られたらと思っていましたが、
これはなかなか苦戦しそうですね。
苦戦と感じながらも、ロバスはどこか愉し気な面持ちだ。
そこに一羽の小さなカラスが舞い降り、ロバスの肩にとまる。
「どうしました、ヤタ。」
するとヤタと呼ばれたカラスは、普通に人の言葉で語り出す。
「妙に騒がしい連中がいる。」
若い女性の声だ。
「騒がしいとは?」
「4番の宝物庫が繋がったとか、
あいつらには黙って、俺たちで山分けしちまおうとか、
見てくれは、いかにもゴロツキな…
だが盗賊と呼ぶには、ちと違和感があったの。
上手く言えんが。」
最近関わった宝物庫と言えばあそこしかない。
「旧貿易倉庫の方ですか?」
「そっちじゃない、ここから大分遠かろが。
北西区のスラム街じゃ。」
「スラム街…なるほど。
あそこにいる者たちなら、確かに盗賊でもないただの追いはぎと
言えるでしょう。」
「追いはぎ…ブッシュワッカーか。」
「しかし、そんな組織に属さないゴロツキ共が
『あいつらには黙って』
などと語っているのは気になります。
お手柄ですよ、ヤタ。
そこに案内して下さい、行きましょう。」
ヤタは軽く頷き、ロバスの肩から飛び立った。
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