帝国戦線異常なし
creek
第1話 黒と白
北部
帝国軍 北部方面隊 第201急襲機人大隊
第201急襲機人大隊。
そこは帝国軍の機人たちの中でも変わり者ばかりが集まったお払い箱部た…
「僕たちはお払い箱じゃないですよ! 歴とした帝国軍の機人の精鋭部隊です!」
ごほん、ごほん、お払い箱部隊ではなく、精鋭部隊だ。
しかし、
「なんで俺がこの部隊をお払い箱部隊だって思ったとわかった?」
「顔に書いてありました」
ヴァイス曹長が俺の心を読んでくる。
憎たらしいほどの笑顔だ。
自分の顔を触ってみるが、考えが書いてあるようには思えないのだが。
そこまでわかりやすいなら部下や上司からも何か言ってくるはずだし、一度も言ってこなかったということは書いてないということだと思うのだが。
「書いてないと思うぞ」
「いや書いてありました」
「書いてないが」
「いえ書いてあります」
「目が悪いんじゃないか?」
「視力はいい方です、部隊でも指折りです。それは隊長も分かっているとおもいますが」
このままじゃ埒があかない。不毛な争いになる。
それに言い張っているのはヴァイスだけだしなぁ。
他の人にも聞いてみるか。
「お〜い! シュヴァルツ曹長! こっちに来てくれ!」
そう、シュヴァルツを呼ぶ。
ヴァイスは逃げたと思うかもしれないが、これも作戦だ。
俺たち士官はそうゆうのを学ばなくてはならないから、知ってるんだ。
シュヴァルツとヴァイスは、
つまりヴァイスが「顔に書いてある」といったら、シュヴァルツは「顔に書いてない」というだろう。
だから俺の勝利だ。
「なんですか、隊長、ヴァイス」
「こいつが俺の顔を見て、思っておる事が顔に書いてあるって言うんだよ。俺は書いてないと思うんだがお前はどう思う?」
「はぁー。ヴァイス、お前の勝ちだ。お昼の時にパンをやる」
え?
どゆこと?
「シュヴァルツ、どうゆうことだ?」
素直に聞いてみる。
軍では「報・連・相」が大切だから、わからない事があったらすぐ聞く。それが常識でわかっていないやつから死んでいく。
そうゆう風土があるから、わからないことを聞いても馬鹿にされない。
「ヴァイスと賭けをしたんですよ。今隊長は何を考えているか、と。俺はいつ連合に攻撃するかを考えている、でヴァイスはこの部隊はお払い箱部隊だと。
で、当たった方に昼のパンを一つあげる、と」
なるほど、それでパンをあげると。
しかし、
「軍の中で賭け事をするのは禁止だぞ。よってこの賭けは無効だ。本来は懲罰になるんだが、賭けを無効にすることと、今後二度としないことの誓約をすることで司令部には報告しないでやる。感謝しろ」
そう。軍の中で賭け事をするのは禁止されている。
しかもシュヴァルツは、このことをヴァイスが知らないと思ったからこんな賭けをしたのだろう。
自分が当たったらヴァイスからパンを巻き上げて、外れたらこうやってパンを渡さないようにする。
これまでの部隊でもしてきたから俺は知っているが、ヴァイスはシュヴァルツと同じ部隊になるのは初めてだから知らなかったのだろう。
こんなことをしているからお払い箱部隊の201に飛ばされたのだと思うが。
「そうゆうわけだ。昼のパンはやらん」
「えぇーー、それはないっすよ〜〜」
「軍規は軍規だ。変えたければ司令部に上申しろ」
「上申は下手すると評価が落ちると聞いたんですけど」
「下手をしなければいい」
「下手をしそうだから言っているんですけど」
下手をしそうな自覚はあるみたいだ。
よかった。
最低限の常識はあるみたいだ。
しかし、これは俺にも飛び火しそうだな。
逃げとくか。
じゃあな、あばよっ!
「自覚はあるんだな」
「シュヴァルツ、それを言っちゃったらおしまい。俺、泣いちゃう」
「泣けば?」
「隊長〜〜、シュヴァルツが俺に酷いこと言ってき……あれ、隊長がいない」
「さっき、どっか行ってたぞ」
「えぇ〜」
帝国戦線異常なし creek @creek
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