第17話ドラマに原案を売った?再び起こる記憶障害
「ドラマ観たよ。驚いちゃった。あまりにも恵美子ちゃんにそっくりで・・。」
中山さんが電話してきて言った。そのドラマはフラッシュバックがテーマになっていて、ある事件の記憶が消えたヒロインが自分を慕う主人公からストーキングを受ける物語だった。
ヒロインが結婚間近なのも似ている点だった。
しかし、私には関係のない話だ。
フラッシュバックで断片的に記憶がよみがえるのだが、回数を経るごとに記憶が鮮明になっていくなど私の場合とは違っていた。
「ただのドラマだよ。でも参考にはなるかな。」と言った。
「会社中で評判になってるよ。」
ストーカーの役が前田さんに似てると思っているようだ。
でも、そんなのただの偶然なのだ。
中山さんとの電話を終えて、胸騒ぎがした。
薬を断って数週間が過ぎたころ、私は新居へと戻っていった。
それから暫くたつと主人から昼間に電話がかかってきた。
「馬鹿馬鹿しい話なんだけど、君が観てるドラマがあるだろう?」
「あれに原案を俺たちが売ったんだろうって言われてるんだよね。」
「話が出来すぎてるって言われて・・。」
「いったい何の話?今どこにいるの?会社じゃないの?」
それからドラマのあらすじについてどこまで知っているのか聞かれた。
その途中で私は急に眠たくなってきた。
「今、ものすごく眠くて我慢が出来ないから切るね。」
「恵美子ちゃん、気を失いかけてるんじゃないの?」
私は電話から離れて押し入れから布団を出し、横になった。
するとプチっと音がして記憶がなくなり、急に眠くなくなった。
再び布団をしまってから、外の空気が吸いたくなって散歩に出かけた。
散歩から帰ってくると主人が家の中にいた。
「どこ行ってたんだ!何度も電話したのに・・。」
「どこって散歩してただけだよ。電話なんかしてないじゃない。」
そういって電話機を見ると受話器がぶら下がっていた。
「私、また記憶が飛んだの?また病気になってるの?」
「何度かけなおしても通話中になるからおかしいと思ったんだ。」
「恵美子ちゃん、また病院に行かなきゃだめだ。先生に診てもらわないと・・。」
「また薬に戻っちゃうの?太っちゃうからやだ。」
「そんなこと言ってられないだろう。」
一連の出来事は主人の前で初めて記憶障害の症状が出たときだった。
「何の話だったの?」
「今はそのことは良い。それよりも病気が心配だ。」
主人は前田さんにA社に呼び出されていたようだ。
「俺、A社に転職しないか誘われたよ。でも断ったから。」
多忙でブラックな今の会社から転職しようとしていた主人は、ほかの会社を探していた。
「A社、いいと思うよ。給料もいいし。」と私が言ったが主人は聞かなかった。
記憶が飛んだことで前田さんのことも再び忘れていた。
そしてドラマはとうとう最終回となり、実はヒロインの婚約者が事件の犯人で殺人者だという幕切れだった。ストーカーしていた主人公はヒロインの異母兄弟だった。
「なんだよこれ。結局俺が一番悪いんじゃないかよ。」
「でも、これでわかっただろう。俺たちがドラマと関係ないんだってこと。」
と主人が言った。
「俺は犯罪も犯してないし、殺人もしていない。」と言うので「当り前じゃない。何言ってるの?」と私が聞いた。
「これで奴らも納まるだろう・・。」
ドラマの話が広がったことで、主人と前田さんが直接対決したようだった。
でも、私はまたすぐにこのことも忘れてしまい日常生活に戻っていた。
今度こそ、まともな奥さんになって彼の子供を産むのだと決めていた。
出産に支障を来さないように断薬を続けてきたのだった。
子供を産みたがっていることは中山さんを通して会社に知られていたようだ。
しかし、彼らは納まってはいなかった。
ついに我が家へ現れるのだった。
ここからは、私の妄想なのか幻想なのか事実なのかわからない部分だ。
主人に確認しても「何のこと?」と言われてしまった。
だから、私だけの側からの事実を次回お届けしようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます