第23話 迷惑な客とレイさんのお仕事②
「もしもしレイさん。303号室よろしくー」
レイスのレイさんは内線用のPHSでアイトの指示を受け303号室へと向かう。
レイスは実体を持たないアンデッドモンスターの一種である。
所謂幽霊や生霊と呼ばれるものの類だが、実体を持たない+ダンジョンモンスターの特性から壁も天井も擦り抜け放題。
正に神出鬼没の言葉がこれほど似合うアンデッドモンスターも中々いないだろう。
レイさんは実体を持たない。
であるのに何故PHSを持ち歩けているのかと言えば。
闇属性の魔法を用いたサイコキネシスの使い手で、物を浮かせたり移動させたり。
以前開催されたフリスビーの遠投大会でこっそりズルして準優勝したりと物体を操る能力を持っているのだ。
因みに優勝はとんでもない馬鹿力でとんでもない飛距離を記録したヒショである。
あの大遠投には流石のワンポも追い付けなかったと言う。
話が逸れたがレイさんの名前は“レイ”では無く“レイさん”が正式な名前である。
つまり敬称をつけると“レイさんさん”、“レイさん様”になり。
簡単に言うと“なか〇まきんに君さんと同じテイストになるので注意だ。
もっと話が逸れたが昨日の夕食は全員がカレーライスで一致するというプチ奇跡が起こった。
数の多いオーガズまでカレーライスで一致するとは全く以て驚きである。
あそこまでいくと最早プチでは無くガチリアル奇跡だろうか。
話を戻そう。
レイさんの特性は壁や床や天井を擦り抜けられる事である。
その特性と、ダンジョン内ではレイさんぐらいしか使う事の無い魔法と言う異世界的便利能力を使って。
最短距離を移動しての料理や酒を客室に運ぶ給仕の仕事を担当している。
「料理や酒などの物質は擦り抜けられないんじゃないですか?」
今質問したのは誰だろうか?
良い質問ですね!
レイさんは半透明のスケスケ黒ローブが空中に浮いているみたいな見た目をしている。
顔や体は存在しないので男の娘か女の子かはわからない。
男の娘か女の子かは。
但しアイトによってスケスケ美少女フェイスマスクを着用させれているので、目を凝らして見れば見た目上では女の子だが。
物質が壁や床や天井を擦り抜けられないのではと言う質問だったが。
それに関しては正しいと言えば正しいし、正しくないと言えば正しくない。
具体的な方法としてレイさんのスケスケ黒ローブで隠すと、実体のない物として擦り抜けが可能になるのだ。
その際ちょびっとだけ料理や酒が目減りするのはお約束である。
そんなひっそり食いしん坊なレイさんは喜び勇んで給仕の仕事に励んでいるのだが。
レイさんの仕事は何も給仕をするだけではない。
クローゼットに用意されているバスローブが着られない程の大柄な客が来れば、ビッグサイズのバスローブをこっそりと客室に持って行ったり。
客の入っている全客室を覗き見、、、チェックしているアイトの指示でサプライズを演出したり。
客室の壁に顔だけ出して単純に男女の情事を覗き見て楽しんだり。
そんな風に忙しなく働くレイさんはとても気が利く頑張り屋さんなのだ。
そして最近レイさんの業務で増えているのが。
Case.3 連れ込んだ異性または同性に対する強姦または窃盗行為への対処である。
ラブホテルを利用した犯罪行為。
「一緒に話題の塔に行ってみないか?一人で行くのは気が向かなくてな。俺は誠実だから絶対に何もしないって神に誓うよ」
そんな巧みな言葉で話題のラブホテルの名を使って客室へと誘い込み、脅したり薬を盛ったり盛られたのを盛り返したりして相手を無理矢理に強姦しようとしたり。
「食事と風呂だけ利用したいから同じ部屋を使わせてくれないか?勿論部屋代と食事代はその都度払うし、風呂に籠ってるから部屋の方は好きに使ってくれていい」
一人遊びに来た客に同室利用を持ちかけて部屋代の割り勘を提案し。
薬を盛って眠らせ、身包みを剥いで部屋を出る窃盗行為に及んだり。
そう言った言語道断な。
お話にならない犯罪者がラブホテルを利用した時にもレイさんは大活躍をしているのだった。
初めに犯罪行為に気付いたのもレイさんであった。
アイトは面白そうな客が訪れると他の客室への覗きがおざなりになる事が多々ある。
その時も週に1度か2度のペースで休憩利用する百合カップルが来ていて、テレビモニターに物理的に齧り付いて見ていたので犯罪行為には気付いていなかった。
レイさんは時々スリルを味わう為、客にバレない様に客室を突っ切る客室横断マラソンを開催しているのだが。
マラソン中に入ったランクEの客室で普段とは違った光景が目に入った。
レイスだから目は無いのだけれど。
ベッドには乱暴に服を脱がされた男が仰向けに寝かされていて。
男を見下ろす形で別の男が男の股間を弄っていた。
男は男に股間を弄られても何の反応も見せず。
しかし男の男だけは男らしく男である事を主張していく。
男自身は何の反応も示さないと言うのに。
男は眠り薬で男を眠らせていたのだ。
男も裸になり男の上に跨って男の男を男の男らしいあ、、、な、、、
レイさんは闇属性の魔法で男を眠らせ、逆に男を起こして男の犯罪を明るみにしたのであった。
場所は変わってマスタールームにて。
「俺がほんのちょっぴりだけ目を離している間にそんな事が、、、」
まず間違いなく。
疑う余地なく紛う事なく百合カップルの動向を1時間以上齧り付いて見ていたアイトが。
まるで一瞬だけ目を離したかの様に言って項垂れた後。
「よし、強姦未遂をやらかした奴は出禁。似た手口で窃盗をやる輩も出て来るかもしれないから監視用に目を増員。目からレイさんに連絡が行って、レイさんが解決。あ、いっけんらくちゃぁぁぁく!な防犯システムを構築する。大変だったらレイスも増員する?」
アイトの問い掛けにレイさんがフードを横に振って否定したので、“犯罪者撃退!レイさん防衛システム”が爆誕したのであった。
因みに“目”とは真実のお口的な何かと同様に壁に埋め込まれているタイプの装飾兼モンスターである。
目を瞑っていると壁にしか見えず、目を開いてもピンホールレンズ並みに小さいので気付かれ辛い。
壁や天井を自由に移動出来るので死角に移動していればまず気付かれる事は無く。
連絡は壁の中に仕込んだ緊急通報ボタンを押してワンタッチでマスタールームとレイさんに連絡が行く仕組みにした。
これによってラブホテル内での犯罪は未然に察知され。
「眠ったな?これでこの女の純潔は俺のもんだ!はっはっはっはっは!はーっはっはっはっはらほれひれはれー」
レイさんの活躍によってラブホテルは何処よりも安全な宿として平和が保たれているのであった。
因みに。
今後レイさんの闇属性の魔法が効かない強者が現れた場合には。
ヒショが出向いて物理で眠らせる手筈となっていたりする。
ラブホテル内で死人が出ない事を祈るばかりである。
豆知識として。
やたらと物理タイプが多いラブホテル従業員の中で。
エルフの血を受け継いでいるエマは風属性の魔法がとってもとってもとってもとってもとってもとっても大得意である。
エマの魔法はアイトを始めヒショやミーアからオーガズに至るまで大変に高い評価を受けている。
体を動かしたり風呂に入って汗を流した後。
エマが全力で風魔法を発動すると。
そよ風が起きて気持ちが良い。
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