第11話 Cランク冒険者の肉弾恋物語①
「俺と一緒に塔に行ってくれないだろうか!」
ヤーサン一の冒険者パーティー。
蒼剣の誓いで盾剣士を務めるニックが頭を下げた。
時間は昼下がりの14時。
場所はマシマシオーク亭と言う酒場の店内である。
マシマシオーク亭は賑々しい街の中心部から離れた場所にあるのだが。
ボリュームたっぷりのギトギトオーク料理が食欲旺盛な一部冒険者達の指示を集めて。
食事時になるとそれなりに人の入る。
やや人気店である。
料理以外にも人気の理由があったりはするのだが。
ニックが頭を下げている相手はマシマシオーク亭の女将であるプニータ。
女性をラブホテルに誘う。
でかい図体をしている割に慎重で肝が小さいと言われがちなニックにしては珍しく思い切った行動に出たと。
蒼剣のメンバーに知られたら関心された事だろう。
プニータは茶色の癖っ毛を後ろで纏め。
瞳の色は碧。
鼻は高めで。
ぷっくりと柔らかそうな唇をした美人だ。
それから。
簡潔に言ってでかい。
縦もでかいし横もでかい。
でかいし太い。
胸もでかいし尻もでかい。
でかいと言うか巨大だ。
所謂どすこい体系だ。
背なんて男の中でも大柄なニックよりでかい。
太腿とかいつもズボンがはち切れそうになってるぐらいでかい。
何ならオークよりでかい。
マシマシオークはプニータを表した言葉なんじゃないかってぐらいでかい。
超でかい。
それでいて顔は割かしシュッとしている。
そう。
顔は割かしシュッとした美人なのだ。
シュッとした美人ででかいのだ。
顔痩せでか女なのだ。
プニータの見た目は局地的に男達の性癖にぶっ刺さり。
プニータ目当てでマシマシオーク亭を訪れる者もいる程である。
ニックもそんな客の一人であった。
二人の出会いは2年前。
当時マシマシオーク亭は開店して間もない頃だった。
場末に新しい酒場が出来たと噂を聞きつけた蒼剣の誓いは酒場の新規開拓にとマシマシオーク亭を訪れた時の事。
肉が山盛りになった皿を客に運んでいたプニータを一目見てニックは思った。
でっか。
と。
料理と酒を注文して。
当時は調理から給仕まで一人で熟していたプニータが忙しなく動いているのを見てニックは思った。
でっか。
と。
その体系故か調理で火を使っているからか。
額から汗が吹き出すも何処か楽し気で生き生きと仕事をするプニータを見てニックは思った。
でっか。
と。
他の語彙が完全消失してしまった様に。
でっか以外の感想が出て来なくなってしまったニックは。
その日から何も手に付かない状態になった。
依頼に出れば無難に依頼を熟し。
食事は朝昼ガッツリ二食。
睡眠はバッチリ7時間摂ってはいたものの。
殆んど日常と変わってないじゃないかって疑惑はあるものの。
それ以外の時間は酒場で見たでっかな女性の事を考えてしまう日々。
そんな日々を過ごしていく中で。
ニックは自分の気持ちに気付いた。
いや、気付いてしまった。
俺、でっかい女が好きなんだ。
と。
思い返せば蒼剣の誓いのネイトやモルトが騒ぐ女には然程の興味が湧かず。
ルイスは何か変なので置いておいて。
一般的に美人と言われる様な女に対して綺麗とか可愛いと言う感情が湧かなかった。
その子の母親の方が可愛くね?とか思っていたし。
自分は極度の年上好きなのだっとニックは認識していたのだ。
それがどうだ。
プニータは自分と同年代か少し上ぐらいの年齢に見える。
そんなプニータが気になって気になって仕方が無いのだから。
これは年上好きなのでは無くでかい女が好きなのだと認識を改めたのであった。
実際は肉付きの良さで若く見えていたりはするのだが。
斯くしてニックは頻繁にマシマシオーク亭へと通う様になり。
常連となった事でプニータにも顔を覚えられ。
世間話を交わすぐらいの関係になった。
1年以上掛けて。
ニックは奥手であった。
冒険者の仕事をしているにも関わらず。
大柄で見るからに逞しい男であるにも関わらず。
ニックは非常に奥手であった。
世間話なら未だしも。
甘い言葉を囁いて口説いたりはまず出来ない。
そんな奥手なニックがプニータをラブホテルに誘う。
ニックにとっては一世一代の大勝負である。
「塔って最近冒険者達が通ってるって言う所かい?ダンジョンだって聞いたけど。あたしみたいな一般人が行って大丈夫なのかい?」
マシマシオーク亭にはギトギトオーク料理とプニータ目当てに冒険者が通っている。
なのでプニータの耳にも塔の情報は入っているのだろう。
但し塔で何をしているかまでは誰も言っていないであろうが。
殆んど一人遊びだし。
「それは大丈夫だ。塔の中は安全だ。何かあっても俺が守る」
見た目の迫力的にはプニータの方が強そうなのだが。
それでもプニータが言った通り彼女は一般人なので冒険者の様に戦える訳ではない。
多分。
ちゃんとした装備をさせたらニックよりも強そうに見えるだろうが。
パワーは普通にありそうだが。
だとしても。
ニックは男らしく。
実は俺よりも強いんじゃないだろうか?と疑惑は持ちながらも。
本気で殴られたら一発で意識を刈り取られそうだと思ってはいながらも。
プニータを安心させる為に自分が守ると口にした。
「流石はヤーサン一の冒険者様だ。頼もしいね」
そんなニックにプニータは笑顔を見せ。
直ぐ様訝し気に表情を変えて。
「あたしも気になってはいたんだよ。この世の物とは思えないとか話してるだろう。けれど聞いた話じゃあ宿なんだろう?あの塔は」
プニータの言葉に。
「そ、そうなんだけどな。広めの部屋を取るから大丈夫だ。俺はプニータの嫌がる様な事はしないし。ほ、ほら。あの宿には風呂があるんだよ。広々とした風呂に入って日頃の疲れを癒して貰おうと思ってだな」
明らかにどもって答えたニック。
嫌がる様な事はしないが。
良い感じになれたら密室だし色々な。
えろえろな事が出来るのではないかという下心はしっかり目に持ってはいるのだ。
故に肝の小さいニックは下心を見透かされた様な気がしてやや挙動不審になってしまった。
これでは断られてしまっても仕方が無いか。
ニックがそう考えて諦めかけた時。
プニータからは予想外の返事が帰って来た。
「良いよ。ニックなら本当に変な事はしないだろう。夜には戻って店を開けなくちゃいけないから、あんまり時間は取れないけれど。それでも良いかい」
「勿論だ!3時間もあれば戻って来れる!」
ニックはやった!と小躍りしたくなる気持ちをどうにか抑え。
「と言う訳だから、下拵えは頼むよダニエラ」
「了解しました。時間になったら店は開けときますから遅くなっても構いませんからね」
プニータは厨房にいる店員に声を掛け。
「それじゃあ行くかい」
「ああ」
横に並んだら四人分は幅が有りそうな二人は。
マシマシオーク亭を出てラブホテルへと向かったのであった。
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