第19話 光の季節のお茶会で(3)
光の季節は十五日。
お茶会が開催されたのは、光の季節も終わりにかかる光の季節の十四日目。
やってきたのは貴族街にあるティフォリオ公爵家の本家離れの別邸。
で、デッカ……! ひろ、広すぎない?
これが公爵家……。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
「は、はい」
「大丈夫ですよ、リーディエ様。出かける時にちゃんと確認しました。今日のリーディエ様は今までで一番可愛いですよ! 一番可愛いリーディエ様を最初に見るのが我々なのはちょっと申し訳がない気もしますが」
「そ、そうですか? うううん……」
ピンク色のふんわりレースの赤いリボンのついたカジュアルドレス。
これは私の初めてのお給料で、既製品を急遽シニッカさんが選んで買ってきてくれた。
このお茶会の帰りに、夜会用のドレスを仕立てに寄ることになっている。
そんなものいらないのでは、と思っていたら「今後ソラウ様無関係でリーディエ様自身と知り合いたいという方が必ず招待状を送ってきますから」と念押しされてしまった。
そうなった時に必要だし、一着あるのとないのでは安心感も違うでしょう、と。
そう言われてしまうと……確かに?
こういうカジュアルドレスや夜会用のドレスが必要になると思うと、私って
なんてことを考えていると、中庭に通される。
綺麗に様々なお花が咲き誇るお庭の中にある東屋で、優雅にお茶を飲んでいたご婦人がお二人。
お一人は白髪のややぽっちゃりな老婦人。
もうお一方はレモンイエローの髪をふんわり三つ編みにしたこちらもぽっちゃりしたご婦人。
歳が一回りくらい違うように見えるお二人のご婦人方は、私が近づくのに気がつくとパア、と嬉しそうに笑顔を見せた。
「まあまあ! あなたがリーディエ様かしら!? ようこそようこそ! よく来てくださったわ! ささ、こっちよ! 座って座って!」
「まあまあ、ハンナさん。そんなにはしゃいでは驚かせてしまうわ。ようこそ、リーディエ様。わたくしはジェシー」
「ワタシはハンナよ。さあさあ!」
「お、お邪魔いたします。あ! ご、ご招待に預かりました、リーディエと申します。ご挨拶が遅れて申し訳ございません」
「いいのよ~! むしろお茶会のご招待を受けたのはこちらなのに、本宅に来てもらってごめんなさいね」
積極的にわたしを迎えてくださるのは第二夫人のハンナ様。
空いている席に座らせられて、公爵家の第一夫人と第二夫人に挟まれる状況に硬直するけれど、ジェシー様がニコニコと微笑んでおられる。
今回お茶会をお誘いしたのは私だけれど、立場は私が下なので公爵家にお邪魔する形になった。
まあ、ジェシー様がご高齢で移動がお好きではないのと、公爵家に名を連ねる方の弟子に入ったことで本家へご挨拶する必要があったことでこういう形になったのよね。
お茶会の準備を公爵家本家側に全部していただいたのは申し訳がないけれど、私が今住まわせていただいているソラウ様のお屋敷にはオラヴィさんとシニッカさんしか常駐の使用人がいないので、公爵夫人をお二人もおもてなしする準備を整えるのは難しかったし。
と、いうわけで今のこの状況。
早速ご挨拶を失敗してしまった!
「あの、ええと……私はその……」
「ええ、ええ。事情は聞いておりますわ。大丈夫よ。淑女教育は受けてこなかったのでしょう? 大目に見るから大丈夫ですよ」
「あう……も、申し訳ございません……」
もうすでに「大目に見ます」って言われてる……!
ああ、本当に申し訳ございません!
「うふふふ! こんなに若い女の子、まるで娘ができたみたいねぇ! ジェシー様もワタシも男の子しか産んでないし、孫たちもみんな男の子だし! しかも
「あ、あ、は、はい。わ、私も
「本当? ねえ、ワタシルビーの
「ハンナさん」
急にお仕事の依頼?
え、これはどう返事をしたらいいのだろう、と驚いて顔を上げたらジェシー様が笑顔でハンナ様の名前を呼ぶ。
するとハンナ様がゆるゆると肩を落とす。
「うう、ごめんなさい。つい、はしゃいでしまったの。急に作ってほしいなんて言ったら困るわよね。でも、そのくらい
「そうねえ。でも、お仕事のお話はもう少し他の話しのあとでもいいのではなくて? 今日のお茶会はリーディエ様のマナーや所作を見て差し上げる意味もあるのですから」
「ああん、ジェシー様がそうおっしゃるのなら……」
さ、さすが第一夫人ジェシー様。
やっぱり年長者の方がお強いのね。
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