第38話:凛のお休みスイッチ。

新婚旅行を終えた僕と凛は夕方、予定どおりマンションに帰ってきた。

ふたりとも残りの1日はマンションでゆっくり過ごしたかった。


飛行機を降りたら、こっちのほうが沖縄より暑いことにびっくり。

僕の思った通りこの違いは、きっと湿度のせいだなって思った。


「帰ってきたね」


「うん、沖縄より、こっちのほうが暑いってどういうこと?」


「ほんとだね」


それから汽車とタクシーを乗り継いで僕たちはふたりの愛の巣に戻ってきた。

どこかレストランで晩御飯でも食べて帰ろうかと思ったけど、

ふたりとも早くゆっくりしたかったから駅前のコンビニで何か買おうかって

ことになった。


凛がおにぎりが食べたいって言うから、それぞれ好きなおにぎりと

インスタントの味噌汁を買った。

贅沢じゃなくても、そういう共有感って逆に幸せな僕たちだった。


日頃からお世話になってる人たちのお土産は、沖縄から送っておいたから

2・3日したら届くだろう。


明日から、凛とふたりだけの暮らしが始まる。

そのことを考えると、自然と顔がほころんだ。


以前に比べたら凛も成長したし、もうスネたり泣いたりは少なくなった。

まったく、なくなった訳じゃないけどね・・・。

少しづつ大人になっていく天使。


で、晩ご飯の前にふたりで仲良くお風呂に入った。

マンションのバスタブは小さいんだけど凛と向かい合わせに上手に入ると

うまい具合にすっぽり入れるんだ。


凛と向かい合わせに座ってると、時々僕の中のエロい人が顔を出したりする。

とうぜん、凛からは「スケベ」って言われる。

でも最近は、凛からもエッチな人が時々顔を出す時がある。


スケベな人とエッチな人は、お風呂から出てテレビを見ながら仲良く

おにぎりを食べた。


「最近のコンビニのおにぎりってイケるね」


「そうだね」


6個あったおにぎりを、凛とふたりで分け合って食べた。


テレビのニュースでは誰か芸能人が不倫したとかしないとかキャスター

だかコメンテーターだかが早口でまくしたてていた。

不倫なんてことに、無駄に時間とお金を費やしてる人もいるんだよな。

幸せな僕からは、そんなことは想像もつかないことだった。


僕はチャンネルを変えた。

別のチャンネルでは、洋画をやっていた。


字幕だった。

凛は日本語吹き替えしか見ない。

字幕を読んでると内容に集中できなくて、眠たくなってくるみたいだ。


あ〜これは、すずの睡眠薬だな・・・そう思った。


「チャンネル変えようか?」


「いいよ、悠人の好きな番組見て」


「私、寝るかもしれないから」


案の定、凛は映画のしょっぱなからアクビばかりしはじめた。


「凛、眠たいんでしょ」


「悠人・・・私、もうダメ・・・まぶたがくっつきそう」


「もう寝な」

「それとも一緒に寝る?」


「うん」


僕はテレビを消して、凛と一緒にベッドに入った。

ベッドに横になった凛は、後ろから僕にハグされたまま、あっと言う間に

寝付いてしまった。


これも凛のすごいところで、ものの5分もあれば寝てしまう。

しかもどこででも寝られる。

よく枕が変わったら眠れないって人がいるけど凛には問題外だった。


だいたい夜9時ごろになったら凛のお休みスイッチが入る。

だから、今日エッチするよって日に僕が風呂から出てきたら凛はすでに

夢の中だったりする。


そして僕は機嫌が悪くなる。

もちろん、起こして、するんだけどね。

じゃないと、僕が悶々して眠れないから・・・。


凛は時々、愛撫してる最中にも寝てたりする時がある。

緊張感のない子だよ、君は・・・色気もなにもない。

でも、面白いのは凛は寝息を立てながら僕にクンニされて気持ちよくなって

イったりする。

寝てるのに・・・腰を振ったりする・・・めちゃ可笑しいし、可愛い。


僕にハグされたまま寝息をたててる凛を見て思った。


来年の20歳の成人式にはダンナ同伴だな。

僕は成人式が無事終わるまで近くのカフェでコーヒーでも飲んで待つのか。


凛と一緒にいるところを凛の同級生に見つかったら、ほとんどの人は僕を

知らないから、この人誰?みたいな視線を浴びるんだろうな。

考えすぎかな。


つづく。


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