第21話:まじハピホ。

僕は今、凛とラブホに来ている。

はじめて入ったラブホに凛のテンションは上がりっぱなしだった。


一通りはしゃいで落ち着いた凛は、ベッドに座ったまま天井を眺めていた。

すると、いきなり


「ねえ、本当にここに誰かと来たことないの?」


その言葉に、またさっきのぶり返しかと僕は思った、で、適当に

誤魔化そうとして・・・何を血迷ったのか


「面白いでしょ、ここ」


ってなにげなく言ってしまった。


(あ〜しまった、火に油じゃん)


遅かった・・・


「やっぱり」


「何が?」


「やっぱり誰か他の女の人と来てるでしょ」

「それって浮気だよ」

「怒らないからさ・・・白状しなさい」


「だから〜来たことないってば・・・」

「勝手に決めつけない」


(もし誰かと来てたとしても浮気じゃないからね・・・もう終わってる話だから)


「怒らないからさ、ね、誰と来たの?」


「だ・か・ら・仕事だって」


「仕事って、こんなとこで何するの?」


凛はベッドから立ち上がって、疑いの目で悠人を見た。


「同じこと蒸し返すのよそうよ、ね」


「怪しい・・・」


またまた疑いの目。

ここは、何が何でも仕事で押し通す。


「仕事なんだって、ここじゃないけど他のホテルだけど・・・」

「ホテルなんて、だいたいどこも同じだし・・・」


僕の答えによっては凛はマジでスネるつもりでいそうだった。

そうなるとエッチどころじゃなくなるし・・・ヤバいし・・・。


せっかく、エッチにこぎつけたのに、凛の疑いで大事な時間が

台無しになるかもしれないピンチ。


僕は何事もないかのように冷静に説明した。


「室内にある注意表示板とか設置する仕事でね」

「僕の会社、看板屋だし・・・だからそういう仕事もするの」

「分かった?」

「そこにあるでしょ、そう言うの」


そう言って僕は枕元にある小さな禁煙の表示板を指差した。


「そうなんだ」


「納得してくれた」


「ん〜・・・なんか誤魔化されてる気がする」


(まだ警戒は解いてないよな)


「あのさ・・・浮気って言うけど、いつ僕にそんなことできる時間があるんだよ」

「普段は朝から晩まで仕事してるんだし・・・休みは凛と会ってるんだから」

「そんな暇ないよ」


「凛だって・・・僕といない時、学校で同級生の男子と仲良くしてるくせに」


「そんなことしてません・・・怒るよ」

「学校にいる時だって、悠人のことしか考えてないからね」


「まじで?・・・」


「まじで!!・・・」


「ああ〜・・・そうなんだ、ごめん・・・疑ったりして・・・」


「私がいけないんだね・・・私が悠人を疑ったりしたから」

「うん・・・分かった、悠人のこと信じる」


「いいよ・・・分かってくれたらいいよ」

「それよりさ、僕たちエッチしに来たんだよね・・・忘れてない?」


「忘れてないよ・・・怖いから時間引き伸ばしてただけ」


「うそ、まじで?、引き伸ばしてたって?・・・人を振り回すのはやめろ〜」


つづく。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る