第13話:天使のわがまま。

僕は凛と付き合いはじめて、いい感じで? イチャイチャいている。

ふたりはもうお互いを認め合っていた。


凛のよそよそしかった敬語も、凛が悠人に隠していた例の借家や家族の

問題を彼に白状したことで気持ちが吹っ切れたのか、それを境にして

急にタメグチを利くようになった。


本当の意味で凛は悠人に心を開いたんだろう。

それからはハグしたりチューしたりは、当たり前のことになった。


凛は化粧をしないから、すれ違う時、石鹸のいい匂いがする。

この匂いが僕にとって最高の癒しをもたらしてくれた。

石鹸の匂いに幼いころの優しい母親の面影が蘇る。


よく考えたら僕は一度も凛に「僕の恋人になって」 と告白したことがない。

いつの間にかお互いが必要な存在になっていた。

ごくごくナチュラルに・・・ 。

まあいい、今更、改まって告るってのも・・・このままで何の問題もないわけだし。


・・・ただひとつを除いては・・・。


どこの恋人でも最初、付き合い始めの時は、お互い遠慮してるところが

あって、嫌なところを相手に知られたくなくて猫かぶってたりする。

でも気を許しあってくると、どうしても多少は化けの皮が剥がれてくる。

それはお互いにだ。


そう・・・彼女の凛のわがままが顔を出し始めたのだ。

ただひとつと言うのが、そのわがままだ。

凛は性格もいいし、何より素直だし、優しい。

でも、ちょっとイタズラ好きでわがままなところがある。

そのへんがまだ子供だってところ。


とくにイタズラはしつこい。

わがままなところがない人なんていないと思うけど・・・

凛にも一人前にあったというわけだ。


悠人のほうは、もう立派な世間ずれした大人だから、少しのわがまま

くらいなら受け入れるだけの包容力は持っている・・・つもりだった。


凛は素直なゆえに、どうでもいいようなことでも、まともに受け止めて

しまうんだろう傾向にある。

僕と違って気持ちにゆとりとか余裕がないのだ。


適当ということを知らない。

受け流すと言うことを知らない。

僕のどうでもいいような冗談でも真に受けてスネたりする。


凛のいたずらが、あまりに、しつこいので


「やめろって・・・そんなことすると僕は他の誰かのものになっちゃうよ」


なんてなことを冗談半分で言った日には、前を見据えて


「そんなこと言っちゃ、やだ」


僕のほうを見ないで、ふくれっ面をする。

しばらくすると


「冗談でもそんなこと言っちゃ、やだ」


って泣き出す。


なんで??そんなことで?って思うかもしれないが

それを理解しようと思えば現役女子高生になるしかないのだ。

まあ、たびたびそう言うことがあった。


つづく。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る