選ばれなければいい

私を壊して(R18)

佐々木佳乃子から連絡が来た。例の作業がひと段落したのだという。


お見舞いと称して足繁く通っていた甲斐もあり、美しい母親には特に怪しまれもせず部屋を通された。いつもは手土産のお菓子だけを入れていた学生カバンに、昨日こっそり避妊具を忍ばせたことなど気づきもしないだろう。


佳乃子は相変わらず、ベッドの上で自身の作品を眺めていた。その表情は真剣そのものだ。そこに矛盾はないか、間違いはないかを必死で探しているようだった。


僕はしばらくその光景を眺めることにした。集中を削ぎたくなかったのだ。


「もうすぐね」

しばらくして、彼女はふう、とため息をつくとパジャマのボタンを上から外した。


淡い色の下着が露わになる。膨らんだ乳房が二つささやかに押し込められていた。それを合図にベッドに上がり込む。彼女は目を閉じて身を預けた。


「選ばれなければいい」


彼女の小さな果実を喰む。僕の手や舌の動きに反応して、彼女が熱い吐息と共に蜜を流す。その甘美な合図に僕の体も反応する。素晴らしい仕組みだと思った。


「消えてしまえばいい」


緩急をつけるといい。そのために乳房は二つあるのだろう。右側を愛した後は、休んでいた左側を愛でる。口に含んだ瞬間の声はどんな音楽よりも麗しい。セイレーンの歌声の如く僕を引き寄せ、快楽の海に沈ませる。


「私を壊して」

頬を赤らめた彼女は、涙交じりの瞳でそう懇願した。


甘い体液に導かれるように侵入する。柔らかくて、温かい感覚に灰色のざわめきが聞こえた。


奥まで到達した時、彼女は目を閉じて眉を顰めていた。そして荒い息を交えて、囁いた。


「もっと酷く、壊して」


お望み通りにしてやろうと思った。

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