第7話 『語り合い』

〝貴方に花束を〟という漫画。それは……花屋で働いている主人公の女の子…月坂美穂が伊集院冬馬という男の子と出会い、恋に落ちる物語だ。



少女漫画だからなのかはよく分からないが、いじめのシーンや、嫉妬のシーンなどが多くて……俺は読んでいてとても胸が痛くなった。

だけど、それ以上に……伊集院冬馬というキャラクターがかっこよかった。いじめから助けたり……少し、いや、かなり強引なところもあるけど……



そして、月坂美穂と伊集院冬馬が両想いになり、結ばれるシーン。俺はそのシーンを読んでいて、とても感動した。悪役兼当て馬だった城ヶ崎透華にはイラついてしまったが……



ただ、そこだけを除けば……とてもいい漫画だった。



「……上原悠馬……こういうの好きなんだ」



早速、語り合いたい。そう、思いながら俺は眠りについた。



△▼△▼



そして翌日。俺は早速、上原悠馬と漫画のことについて語り合いたかった。上原悠馬はめちゃくちゃ楽しそうに語り合い、俺もそんな上原悠馬を見て、とても楽しかった。



解釈一致や、解釈違い。そして、好きなシーンや嫌いなシーンをめちゃくちゃ語り合いたい………!そう思った俺は、早速、上原悠馬にメッセージを送った。



速攻で既読がつき、返信が返ってきた。

俺はすぐさまメッセージを送った。

〝今から語ろうぜ〟 既読がついたと思ったら、すぐに返事が帰ってきた。

〝いいよ!語り合おう!!〟 そんな上原悠馬とのやりとりに心が躍り、思わず笑みが溢れてしまった。



そして、放課後。俺は早速、上原悠馬と語り合いたいがために、教室を飛び出したところまでは良かった。……良かったのだが。



「(クラスに行って……何をする気だったんだ!?)」



俺は自分の教室を飛び出した後、そんなことに気がついた。だって……俺はコミ障だし、クラスに行って〝上原くんを呼んで〟なんて言えるわけがない。

それに、別に教室に行かなくても、メッセージでやりとりすればいいじゃないか。

そう思った俺はメッセージを送ろうとすると、



「(ん……?今日は、屋上か……。って、屋上?)」



屋上っ!?屋上って鍵かけてあるよな……?いや、でも、上原悠馬だ。あいつは底抜けなく、コミュ力が高い。もしかしたら屋上の鍵をくすねて、屋上に行けるようにしたのかもしれない。



「……もしそれなら俺も怒られるんじゃ……まぁ、その時はその時か」



俺はそんな安易な考えで、屋上へと向かうことにした。

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