庭の散歩
大学3年の後半、就活が始まった時期はなんとも憂鬱だった。周りの友人は自己分析がどうとか、エントリーシートがどうとか忙しそうに、しかしどこか嬉しそうに話していて気味が悪かった。就活が始まる時期のみんなが浮き足だったあの雰囲気、本当になんだったんだろう。自分は就職試験の勉強を始めていたが、民間企業の就活と時期も方法も違うので、なんとも居心地が悪い思いをした。中途半端に忙しく、しかし本番はずっと先、という生殺しのような落ち着かない日々を過ごしていたある日、実家に帰ったところ母親から「就活なんて庭の散歩だから」と適当な励ましを受けた。庭の散歩。そんな楽勝な問題でもないんだけどな、と思いつつ、そのワードの軽さを気に入って自分の就活のテーマにした。筆記試験も、集団面接も、個人面接も、全部たかが庭の散歩だ。その後、なんとか無事に第一志望に合格した。過ぎてみれば大したことのない、ただの散歩みたいなものであった。
こんな感じで、飲み会での誰かの発言とか、ツイッターで流れてきた知らない誰かのつぶやきなど、発した本人は覚えてないような言葉が自分に強く響くことがある。
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