ずるいひと
千世 護民(ちよ こみん)
第1話
前の職場のこと思い出して眠れなくなっちゃった。え?よっぽど嫌な事でもあったのって?うん。そういう事。
私は弱い人。
私の仕事は福祉関係。人の命を預かる仕事だからその分責任がある。それは頭では理解している。でも、すぐに失敗してしまう。次も、やり方を変えてまた失敗。中々上手くいかない。
「大丈夫よ。」
「しょうがないね。」
「まだ新人だからこれから覚えていけばいいの。」
周りの先輩はフォローしてくれるが、それが自分を責める1番の理由になる。
またできなかった。また余計なことをしてしまった。どうして迷惑ばかりかけてしまうんだろう。
私は自己中心的だ。
また失敗した。でも落ち込んでばかりもいられない。
「ねえ、次どうするの?」
「ここはこうすれば?」
「どっちがいいの?」
わかってる。私のために効率のいい方法を提案してくれているのはわかってる。私はすぐに立ち直れるほど強い人間じゃない。
まず一度自分の中で反省会をする。そうしないとまた失敗する、周りに迷惑がかかるから。
でもその時間すらない時もある。仕事が無限に降ってくるときもある。
そのときどうすればいいか分からなくなる。ちょっと頭の中がこんがらがって自分ではどうにもなくなる。私の頭はひとつつまずくと次には進めない。
「じゃあ、こうします。」
「わかったよ。」
周りのフォローも“なんでこれくらい出来ないの”と、言われてるみたいで申し訳なく感じる。時々自然に涙が出てくることもあった。
でも、まだ諦めたくなくて頑張る。けど失敗に終わる。
なんでこんなことくらい出来ないんだろう。きっと先輩も口では「新人だから」と言っているが、実際「邪魔だな」とか思ってるんだろな。もう何回失敗すればいいんだろう。
そして最後は簡単。
自分がいなければもっとスムーズに終わるじゃん。
「辞めさせてください。もう迷惑かけたくないです。」
「別に迷惑だなんて思ってないよ」
「むしろ教える方も学んでるからね」
全部わかってる。人手も足りないし辞めて欲しくないのも、自分だって辞めたくないのも。新人だし出来ないのは当然。
そうじゃない。それは言いたいことじゃない。
迷惑かけたくない。
先輩の思ってることが分かるからため息ひとつで申し訳なくなる。
出来ない自分が悔しいけどできないものはできない。
失敗するのがこわい。先輩がこわい。
やっぱりこの仕事向いてないわ。
何度か仕事中にも関わらず泣いた。限界だった。私じゃなくても先輩がやればはやく片付く。
私じゃなくても…
私じゃない方が上手くいく。
きっと私がやると失敗しちゃうから。
ほら、私に任せるから。
ごめんなさい。私のせいで。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
ずるいひと 千世 護民(ちよ こみん) @Comin3
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