貴族の屋敷に務めるメイドには自由がない。
藤原
第1話 メイドの朝
この貴族の屋敷では私含めてたくさんのメイドが働いている。働かせていると言った方が実は正しいかもしれない。ここで働くメイドには自由などと言うものもないし、貴族のコマにでもなれれば良い扱いというほどのものだ。
「……眠い」
メイドの朝は早い。屋敷も広いのでやることも多いのだ。そのため起きるのも早いが、この屋敷のメイドは起きてからの準備に普通の人とは異なる点がいくつもある。
例えば拘束具。メイドは基本的に個室が与えられている。その部屋は基本的に施錠される。トイレ等特殊な事情がない限り夜に自ら開けられない。もし開くとすれば緊急事態の時か、この屋敷の主人が部屋に来て私を抱く時だけ。しかも電子的な施錠が施されているので人の力で開けることはまず不可能で、夜にげ出すことは絶対に無理だ。
そして、朝起きると私たちは寝巻きを脱いで下着だけになる。これは誰でもこうなるだろうが、ここらからがこの屋敷では違う。壁にかけられた足枷を自ら嵌めるのだ。鎖の長さは肩幅程度である。なぜこのようなものを嵌めるのか不明だが、昔は手枷もついていたらしい。どうやらそれは仕事上差し支えがあるということで嵌めなくてもよくなったということだが、足枷についてはこの部屋以外だとお風呂でしか外されない。そしてその足枷をきちんと施錠しなければ部屋のロックは解除されないというなんとも意味不明にハイテクなシステムである。
さらに私たちには首輪が付けれている。この首輪、見た目こそ無骨なものであるが、中身はやはりハイテクで私たちの居場所を常に補足しているし、健康状態までもを把握できるものらしい。らしいというのは私もよく知らないからだ。
その首輪は鎖をつけられるように設計されており、メイドが何かしたら即座に拘束できるようになっている。そうそう、別に手枷もは着けていないとは言ったが、それは手に何もついていないというわけではない。腕輪はつけなければならない。もちろんそれにもすぐに鎖をつけることはできるので拘束など容易にできるだろう。つまり、私たちメイドは何かしたら一瞬で身動きを制限されてしまうようなものを身につけて日々の仕事に励んでいるのだ。
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