昔話のその続き

@Tutti__TRPGmob

それから

むかしむかし、あるところに小さな女の子がいました。

頭が良くてスポーツもできて、いつも周りに友達がいました。

でもある日、女の子はいちばんの友達と喧嘩してしまいました。

それからしばらく、女の子には友達ができませんでした。

しかし、とある学園に編入してすぐに、ある女の子と出会いました。

真っ赤な長い髪が目印の、少し不思議な女の子。


その子と一緒に過ごすうちに、その子は女の子をお姉ちゃん、と呼んでくれるようになりました。

女の子は、それがたまらなく嬉しくて、何度も何度もその子を可愛がってあげました。

しかし、ずっと一緒にはいられません。

お別れの時が、やってきました。

女の子はとても寂しかったですが、苦しくはありませんでした。

なぜなら、女の子は見つけていたのです。

心を許せる、本当の、友達を。




ぱたん。と、本を閉じる。自分で作った、外も中も不格好なそれを本棚に戻す。

12年経った今でも思い出せる。あの学園で過ごした日々。そして、赤い髪の少女との、かけがえのない時間。

あの学園で出会った皆はどうしているだろう。と空想しながら、自分のゼミ生の論文に目をやる。

あれから私は、A市のそこそこ有名な大学へ進学し、そこで助教授から教授になった。専門は地方文学のあたり。宮沢賢治なんかが有名だろうか。


そうこうしていると、玄関のチャイムが鳴る。同居人が帰ってきたようだ。

ドアを開けて出迎える。そこには、真っ赤な髪をたなびかせる、どこか不思議な雰囲気の女性が立っていた。

「ただいまです、葵お姉ちゃん。」

その女性は、昔と変わらない口調で私を呼んだ。思いがけない不意打ちに驚きつつも、

「おかえり、ふーちゃん。今からご飯作るね。」

と、こちらも昔の呼び方で返す。

ドアが閉まり、キッチンの明かりが灯る。


いつかその道が別れて、それぞれの人生を歩むまで、

もう少し、このお話は続きます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

昔話のその続き @Tutti__TRPGmob

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る