"好き"が伝わってくるのだが、どうしたら良いものか?

奏流こころ

プロローグ

 "心が読めたら、どれだけいいものか"


 なんて思ったことはないだろうか。

 人との関わりは時に大変なこともある。

 喧嘩をした時に直ぐ仲直りが出来れば苦労はしないが、意固地になって、なかなか仲直りのきっかけが掴めず、暫く口を聞かなかったり。

 アプローチをしているのに全く伝わらなかったり、空回りして時にフラれてしまったり。

 相手はこう思っていると思い込んで接してみると的外れだったり。

 いろいろあるだろう。


 それが""なのだ、


 俺、篠宮しのみや宙弥ひろやは小さい頃に、気付いたら""。


 幼稚園のある日。

 泣いている友達に何があったのか、話しかけようとした時に伝わってきたのだ。


"『悪口言われた、悲しい』"


 それで俺は『誰に何か言われたの?』と、本当に伝わってきた通りなのかを質問したら、その子は悪口を言った子の名前を教えてくれた。

 直ぐに悪口を言ったであろうその子の所に行って話をしたら『謝るよ』と言って、その日のうちに2人は仲直りをしたのだった。


 最初は仲直りをして嬉しくなり、それからみんなの為に役に立とうと、心を読み解決していった。


 が、ある日を境に止めた。


 近くの公園で友達と遊んでいて、親同士はベンチに座って話し込んでいた時のこと。

 喉が渇いて水分補給をしに親の元にいくと伝わってきた。


"『また愚痴を言っていて、本当に疲れるわ』"

"『いつも共感してくれて嬉しい』"


 聞かなかったことにして水筒を受け取り、水を飲んで、また遊びに遊具の所に戻った。


『帰るよー』


 親の呼ぶ声が聞こえて、またベンチの方に向かう。

 『さようなら』と挨拶を交わして、別々になると。


"『今日聞いたこと誰かに話そう』"


 友達の親の黒い部分を知り、背筋がゾワッとなって冷たさを感じ、とても怖くなった。

 仲良くしているようでそうではないことを、子供ながらに大人の世界を知ってしまった。


 それからは相手の心を聞き流すようになっていた。

 自然と聞こえてしまうが故に、たまに疲弊することもあったが、なんとか高校まで辿り着いた。


 高校2年生となり、もっと伝わってくる心の声。

 子供っぽく当たり前な喜怒哀楽の感情の他に、思春期特有の恋愛だったり反発心だったり揺れてしまう繊細な心だったりが伝わってきていた。


 "この能力、いつになればなくなるのか"


 俺の悩みは受験勉強のことよりも根深い悩みとなっていた。

 クラス替えで隣の席になった女子が、それを更に深くしていった。


「おはよう、篠宮君」

「おはよう、雨宮あまみやさん」


 名前は、雨宮 優希子ゆきこさん。

 見た目はゆるふわな雰囲気で、天然な性格らしい。

 平均的な身長で、髪は手入れが行き届いている艶やかなストレートロング。

 そんな彼女には"秘密"があった。


"『今日も宙弥君カッコイイー!』"


 はぁ…。

 何故、

 全く分からない。

 いつからこんな感じなのかも全く。

 どうかわしていこうか、考える日々である。


 これは心を読める俺と、それを知らずに気持ちを押し出す彼女のお話である。

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