宣告を受けた勇死者
おおやましのぶん。
第1話 エピローグ
プロローグ
「そんな・・・どうしてあの子に限ってそんな・・・」
若い母親は我が子に降りかかった厄災を嘆いた。
「あの子にそんな大役を負わせるなんて・・・」
「もう国が決めたことだ。甘んじて受けよう」
威厳のある声で父親は母親の言葉を制した。2人の間には5歳ぐらいの男の子が座っている。
男の子はこれから訪れる運命を知らない、ただ不思議そうな顔で両親の顔を見比べている。
「そんな、あの子はまだほんの5歳なんですよ」
「分かっている」
父親も無念さを抑えきれない表情を浮かべる。
「どうしてあの子が・・・あの子じゃなきゃいけないんですか?」
母親は椅子から立ち上がり、体を震わせた。
「私じゃいけないんですか?私が代わりにやりますから!!」
母親は泣き叫びながら両手で床を激しく叩いた。
「スフィア、やめなさい」
父親は静かな声でスフィアに告げる。
「しかし、あなた・・・」
「やめろと言っている。この決定は覆ることはない」
父親の表情を見てスフィアは力なく椅子に腰を下ろした。
「私だって辛いのだ」
父親は奥歯を噛みしめる。そして自分の無力さに怒りを覚えていた。
「これからあの子には過酷な運命が待ち受けているだろう」
父親と母親は黙って聞くことしかできなかった。「その運命からあの子を守ってやることが出来ない。だから、あの子の側にいてやってくれ」
父親は椅子から立ち上がり、妻の肩に手を置く。
「私達にはそれしかすることができないのだ」
スフィアは夫の手に自分の手をそっと重ねる。
「あの子の未来に幸多からんことを・・・」
母親は両手で顔を覆いながら涙を流した。
そして運命の日を迎えた・・・
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