後編 私

私達は付き合っていた。紛れもない事実だ。



君は怪我をして、手術してまだ辛そうなのにいつも笑顔で面白くて、そんなところが私の心に響いた。好きになった。だからあの日、あの寒い12月の自習の日に君にクイズを出した。

「ねぇ、好きな人当ててよ」

「えっ、めんどくさ」

「ねぇ当ててってば!」

「んーあいつか?」

「違う」

このやり取りが40分続いた。

「そろそろ当ててよ!」

そしてふざけた調子で君は言った。

「まさか、俺?」

紙にYesって書いて渡した。私はすぐに返事が聞きたかった。けど君は、

「考えさせて」

と言った。終わったと思った。その日の夜はずっと頭の中で『終わった。詰んだ。振られた』がグルグル回っていた。



次の日の夕方。君からの返事が返ってきた。私達は付き合い始めた。そこからしばらく楽しい時を過ごした。すごく楽しかった。何もかもが輝いて見えた。



時は早いもので夏休みも終わり9月に入った。学校が始まったけど、受験とか親のこととか自分はこれからどうしたいか色々考えこんでしまって体調を崩した。今思えば君に相談すればいくらかマシになったのかもしれない。でもそこまで頭は回らなかった。

君と話してないし、保健室にいるから学校でも会わない。一緒に帰ってあげてもいなかった。全部断っていた。体調の悪い私を見てほしくなかったから。

そんな中、友達に遊びに誘われたので行ったら2対2で私は好きでもない同級生と組まされた。その子と2人で座っている所を友達のSNSにあげていた。それを見た君がどう思ったかは想像するのは容易だ。


ある日、君が君の友達を保健室へ連れてきた。私は声を掛けたかったけど何を話せばいいのかわからないし、君は話しかけるなというオーラを発しているように感じた。だから顔を伏せ君を見ないようにした。

その日に君から連絡がきた。

「俺と別れたい?」

と。

私は相変わらず勉強や将来のことで頭がいっぱいいっぱいだったから君に別れを告げた。とても大変な決断だった。その日は、悲しくて悲しくて泣いた。



その後、君は県立の学校に進んだ。私も県立の高校に進んだ。でも友達はできないし、むしろいじめられていた。やりたかったバンドもできない。そんなとき学園祭でいい人と出会い付き合った。でもその人は私の体目当てで、私が妊娠したかもと連絡すると彼とは連絡が付かなくなった。結局妊娠はしていなかったけど学校での立場はなくなり、私は学校を辞めた。

学校を辞めてから1回だけ駅で君を見つけた。一瞬で君だと分かった。けど声は掛けられなかった。いつまでも私は君を忘れることはできないのかもしれない。そう思った。


私達には早すぎた青春だったのかもしれない。


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早すぎた青春 広川 海未 @umihirokawa

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