10話「ハミングがきこえる」

「歩き疲れてない?この後レコードショップ行こうかなって思ってるんだけど?」


「大丈夫です!!よかったら優希ゆうきのおすすめ教えてください!私色々聴きたいです!」


すっかり元気になったもえの笑顔は俺の中に天使が舞い降りた様に感じた。


「ここ!結構いいCDとかレコード売ってるんよね!」


そして今日の最終目標のレコードショップに着いた。


早乙女さおとめさんはどういうジャンル聴きたいとかある?」


「‥」


「ん?」


「‥」


「も、え」(小声)


「え?」


「萌って呼んでください」(小声)


「あ、ごめん萌はどうゆうジャンル聴きたいとかある?」


「はい!私最近ちょっと渋谷系に興味持ってまして‥」ニコッ


「それだったら鉄板はオサケンだけど、カヒーカリーとかもおすすめだよ!」


「なるほど、私渋谷系本当にわかんなくてシンバルーズとかも渋谷系なんですかね?」


「逆にそっち知ってるんだ。マニアックだね‥でもあれかApend好きならそっち系の方が確かに好きそうだね!!」


今までなんか自分の好きな音楽の話は周りと浮くだけだから出来るだけこの手の話はしてこなかったけどこんなに話が合う相手と話すのは楽しいな‥


「先輩は音楽好きになったんですか?」


「俺は逆に服から好きになってさっき言った古着屋のヒロシさんとかがこういう服着るならこの時代にはやった音楽とか知ってるのが当たり前だとか言われたのが始まりだったな〜」


「確かにあの人なら言いそうですね!」


若干誤魔化してしまった。服を好きになったのはある人の影響だ、でもその人の事は言う必要もないよな‥


「私、何枚か候補絞って買います!」


「俺もこのCD買おうかな」


「先輩それって”humanoid sound system”ですよね?」


「え、萌ってここまで守備範囲広いの?」


「いや、それお兄ちゃんのバンドなんで!」


「マジ?」


「マジです。」


全然気が付かなかった。正直最近1番好きなバンドだったからサイン貰っとけばよかった‥


こうして俺らは買い物を終えた。


「いや〜今日は本当良い一日だったな!」


「はい、優希のおかげで本当に楽しかったです。」


「じゃ今日はそろそろ帰ろっか!」


「あの!」


「ん?」


「今日一日中わがまま付き合ってくれてありがとうございました。最後にもう一つだけわがまま付き合ってくれませんか?」


最後のわがまま?なんなんだろう‥


「私とプリクラ撮ってくれませんか?」


「え?プリクラ?」


「はい、その先ほども話した通り中学、高校時代に親しい友人ってものが居なかったので一度もやった事ないんですよね〜で、もし友達が出来た時にプリクラ撮った事ない女ってヤバいじゃないですか?」


うーんヤバいんだろうか‥

てかそもそも俺とプリクラなんか撮っても楽しいんだろうか‥


「それだったら、舞と仲直りして撮りに行ってみるのはどうだ?せっかく形に残るなら友達と撮ったほうが良い気がするけど‥」


「それじゃダメなんです!優希と撮りたいんです!」


「そこまで言うならじゃ、いく?」


「流石です!」


こうして俺は最後のわがままであるプリクラを撮りにきた


「あの、初めてで私全くわからないです!!」


そんな元気よく言われても困る‥


「いや、おれもあんま経験ないけど‥」


「やべーっす、やべーっす」


また萌がおかしくなってきた。


なんだかんだで撮れることになった


「次はこのポーズで撮ろう!3.2.1」パシャ!


「私、顔おかしくないですよね?」


「嫌、俺に聞かれても分からないぞ‥」


「最後!次はこのポーズで撮ろう!3.2.1」パシャ!


ん??

本当に想定外な事が起こった。

なんと彼女は俺の腕に抱きついてきたのである。


「ちょっと、萌ちゃん????」


「てへ、ちょっと優希にいたずらです!」


焦りまくる俺だったが、意外にも萌も顔を赤らめていた!

無事に俺らはプリクラを撮り終えることに成功した!

何故かどっと疲れた


「やりましたね!」


「なんとかやったな‥」


「本当に楽しかったです今日。全部家宝にします。」


「それなら良かった。そういえばこれ、渡し忘れてた。」


「これ、缶バッジですか?」


「そう!最初に寄った古着屋で売ってたんだけど今日の記念にって思ったんだけど、なんだかお土産だらけになっちゃったね‥」


「これも家宝にします。」


「家宝多すぎない??」


「なんか友達って今までできなくて、どうせって諦めてた自分が居たんですけど、今日のおかげで本当に気持ちが楽になりました。

何度も言っちゃいますが本当にありがとうございました。」


「本当によかった。」


「てか優希なんか隠してません?」


「え?」


「なんかヒロシさんが前にこんな事もあったって時とか前からちょくちょくなんか本心っていうか本当の事を隠してる気がするんですよね。

私もそのタイプなんで気持ち分かるんですよね。」


「ごめん、バレてたか‥」


「でも良いですよ。優希が話したいって思ったタイミングで、私も今まで誰にも中学の事言えなかったんですからね‥」


「そっか、ありがとう。」


「でもいつかは絶対私にその話してくださいよ?」


「うん。約束する。」


「後、文化祭で私弾き語りするんで良かったら、嫌、絶対見に来てください!」


「わかった。それも約束するよ。」


「ありがとうございます。」


「萌は凄いなほんと。俺こそ今日はありがとね。また明日学校で会お!」


「はい!わかりました!とりあえず帰ったらFINEします!」


どうやら彼女にはお見通しらしいな‥

俺もそろそろ過去に向き合う時が来たか。

“彼女を作れない理由”

“中学生時代一時期、つばさ栞菜かんなと話してなかった頃”

“なんで俺が音楽を好きになったか”

いつかは萌にも朝比奈あさひな先輩にも話す時が来るのかもな‥

そんな事を思いながら家に帰った。


.

.

.


後日学校にて


「すいませーんこのクラスに早乙女って子いる?」


「あれ、翼様‥じゃない翼君!どうしたの?もしかして私に会いに‥」


まいちゃん、早乙女って子がこのクラスに居る?」


「チッ翼君もサブカル女か‥」


「おーい萌ちゃん!お客だよ!」


「あれ?翼先輩?」


「早乙女さん、ちょっと今大丈夫?」


「はい!」


「ごめんね昼休みなのに呼び出しちゃって!」


「いえ、今日は丁度部活もないので大丈夫ですよ!」


「早乙女さんは優希の事どう思ってる?」


「優希‥新川しんかわ先輩とは友達やらせて貰ってます!」


「やっぱ、そうだよな‥」


「やっぱってなんですか?」


「いや、ごめんこっちの話だ。なあ、この前2人で遊んだ時に優希にこう、辺な言動とか無かったか?」


「ありました。なんか過去に大きな出来事があったような感じがしましたね。」


「やっぱり気がつくよな‥ねぇ、急で申し訳無いんだけど俺と一緒に優希を救ってくれないか?」


「救うんですか?」


「あぁ、あいつはいつまでも過去に囚われ続けてるんだ。そのせいでつい最近も人に迷惑かけてるんだよな。」


「その、新川先輩の過去に何があったんですか?」


「俺の口からは全部は言えないけど過去にあいつは恋愛関係で少しいざこざがあってな、それからあいつはどっかで諦めて逃げるようになっちまったんだ、その癖誰かの事は救おうと必死になれるんだよな。」


「そう、なんですね」


「多分最後はあいつの口から全部話してくれるはずだからそれの手助けをしてやりたいんだよ俺はさ」


「具体的に私は何やれば良いですかね?」


「何もしなくて良い」


「へ?」


「何もしなくて良いってよりは今のままそばに居ていろんな話をして欲しいんだ!

高一の頃は俺と幼馴染の栞菜にしか心開いてなくてよ、友達はできてもそこまで深く関わろうとしなくてさ〜ここ最近なんだよな、あいつが自分から誰かと関わろうとしてるの。だから今のままあいつと沢山話してほしい!」


「私この前会った時になんか違和感みたいなのに気がついていつか話してくれるって約束してくれたんですよね。実は私も過去に人間恐怖症になるような出来事があって、それを自分の事のように怒ってくれて、それを変えれるきっかけを作ってくれました。だから私も新川先輩の力になれるように頑張ります。」


「そっか、ありがとう。本当あいつは馬鹿だな‥」


「あの私‥」


「好きなんだろ、優希の事!そんぐらい分かるよ、だから無理強いしたくないんだけど、協力してくれるかな?」


「はい、どんな結果になろうと新川先輩が前向けるように頑張ります。」


「それなら良かった。まああいつちょっと変な奴だけど真っ直ぐな男だから凹みやすいけどなんかあったら言っちゃって良いからな!」


「わかりました!!」


「良かったな‥優希お前にはこんなにも力貸してくれるやつが居るぞ」


.

.

.


文化祭まで後2日になった。

2日前からは学校も授業が完全になくなりすっかり文化祭ムード一色だ。


「おい翼そっちの準備は順調なのか?」


「塗装班はもうそろそろ終わりだな!」


「装飾はもう少しかかりそうだな‥」


「衣装完成!!」


クラスの女子による衣装合わせが終わったらしい。


「優ちゃん、翼、みてみて〜」


喫茶店のはずがクラシカルのメイド服を着た栞菜が現れた!


「お、似合ってるじゃん」


「馬子にも衣装ってやつだな‥」


「ちょっと翼、なんか言った??」


「いや〜べっつに〜」


メイド服を着た栞菜はいつも以上に可愛い見た目をしていて普段とは違う一面を見た俺は少しドキドキしたのかもしれない。


こんな何もない一日が俺は大好きだ。


そう。これは嵐の前の静けさであった。


昼休み、萌にも呼び出された俺はいつも通り購買に行く前に会うことした。


「あの、この前言ってた文化祭のライブなんですけど、13:30からなんでよろしくお願いします!!」


「わかったよ!楽しみにしてる!曲は何やるの?」


「それは、当日のお楽しみです!」


「そっか!わかった!楽しみしてるよ」


「あれ、優希くん〜!」


「朝比奈先輩!」


「文化祭の事なんだけど劇がロミオとジュリエットやるのよ〜、それで劇の時間13:30だからよろしくね!」


「はい、わかりまし‥ってえ?」


「どうしたの?」


「い、いや今この子のライブ見に行くって話だったんですけど、それも13:30で‥」


「ふーん、君、名前は?」


「私は早乙女萌です!!!」


「そう、萌ちゃん、ごめんね〜優希くんは劇観にくるから来れないんだって〜」


「いや、いやいや朝比奈先輩でしたっけ?優希はライブ見にくるって約束ですから!!」


や、やばいこれはダブルブッキングってやつなのか‥


「あの、すいません俺‥」


「まあ、いいや、優希くん当日までにどっち来るか決めといてね!じゃ、またね〜!」


「優希!私も部活があるので失礼します。ちゃんと決めといて下さいね???」


「は、はい‥」



お、お、終わった‥

嵐どころか大嵐が俺の元にやってきたのだった‥


早乙女萌編

ー完結ー

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