第13話 女子たちと自己紹介

チャイムが鳴り終えると、クラスの数名は席を立ち歩いて、友人の元へと向かった。


まだ終わってすぐということもあり、教室を出る人はいないらしい。


ミナクールが俺たちの所へトコトコ歩いてくる。


辺りを見ると、まだ初日だからか、3、4人グループが多い気がする。


恐らく部屋割りのなごりだろう。


皆話せる人がいないのでとりあえず知っている人と固まっているようだった。


「この後どうするんだ?」


俺が、ナルキ、ヨロ、ミナクールに問いかけると、初めに返してきたのはナルキだった。


「ん~、まだ入学したばっかりで全然考えられてないけど、僕的には魔獣狩りをしてみたいな。今後も生活していかないといけない事を考えると、お金はあったほうがいいから。」


続いてミナクール。


「ふふっ、魔獣狩りか、いいねぇ。魂が燃える。」


最後にヨロ。


「ししし親睦会的なのをや、やるんでしたら、そそそちらをゆゆうせんしたい、です。」


ヨロの言葉を聞いた俺は、周囲の様子を見て指を指しながら言う。


「うちのクラスは、親睦会は無いんじゃないか? もう1グループ教室を出てっちゃってるし。」


俺が目を向けた先には男3人で固まっているグループがあった。


ショートヘアでいかついスポーツマンっぽい見た目をしたやつが一人と、同じような顔が二人(双子っぽい)。


魔物を狩る気満々といった表情でもう教室を出ていく。


そんな彼らを見てナルキは呟いた。


「行動が早いね~。」


「そうだな。朝食は先輩が作ってくれたが、こっからはそういうわけにはいかないしな。なんなら俺たちももう行くか?」


少し気が早いが、それに越したことはない。


より早く上のレベルに行くには、周り以上に頑張らないといけないのだ。


多少急ぐくらい、なんてことないだろう。


俺が提案すると、三人ともうなずいた。


「そそそ、そうですね。他に何もないなら、ま魔獣を狩りましょう。」


「まっ、初日からそんなに気を張る必要はないと思うけど、ものは試しだからね、もう行っちゃうのもいいかも。」


「素晴らしいッ!魔獣たちを僕の美しさで魅了するのだッ!」


これから殺す魔獣を魅了してどうするんだ?


とりあえず、皆賛成したということで、先に行った三人組に続いて魔獣狩りに行こうという結論になる。


座っていた俺、ナルキ、ヨロが立ち上がり、これから移動しようというとき、不意に四人組の女子たちが俺達に声を掛けた。


「そこの男子四人組、どこ行くの? 狩り? 良かったら一緒にいかない?」


そう言ってまず最初に近づいてきたのは紫髪紫目をしたポニーテールの女の子だった。


童顔なのに対し高身長で、全体的に可愛らしい容姿をしている。


珍しくまともそうだ。


「いいけど、君たちは?」


ナルキが返答する。


「あたしの名前は、エリーゼ、よろしくね!」


彼女が自己紹介を始めると、他の三人も一緒にやって来る。


そしてエリーゼに続いて名乗り始めた。


「わたくしの名前はローズマリー、オルトー子爵家の次女ですわ。以後よろしく。」


最初にそう言ったのは橙色の髪をロール状に巻いている黄眼の女の子だ。


身振り手振りが上品な感じで、貴族と言われても納得のいく雰囲気があった。


彼女が自分の事を貴族と言った時、ナルキが少し嫌な顔をしたのを俺は見逃さない。


「じゃあ、次は私かな? 私の名前はシア、よろしくね、エスタ君!」


次に名乗りを上げたのは、銀髪青目で、ロングヘアーの女の子だった。


完全におろしている銀髪は、エイリア先生の髪と似ており、さらさらできらきらと光を反射していた。


何故か名指しであいさつされたので、俺達はとりあえずよろしくと返した。


何でこの子俺の名前知ってるんだ? と思ったが、よくよく考えれば入学式の時に一人一人名前を呼ばれているので、別に変なことではないのか。


だがそれ以上に若干怖いのは、彼女がずっと俺の目を凝視していることだ。


俺なんかやったかな?


照れ隠しか、観察されている感じが怖かったのか、自分でもわからないが、咄嗟に俺はよそを向いて視線を外してしまった。


「最後はわたしね。私はノエル、よろしく~。」


そう言ったのは金髪ショートの女の子だ。


こちらは普通にかわいい女の子という印象を受けた。


ずぼらな訳ではなく、かといって上品な訳でもなく。


普通でまともそうだ。


ただ、何故だろうか、どこはかとなくミナクールに似ている気がする。


いや別に今現在へんな事をしている訳でもないのに、なんかミナクールに通ずる物を感じるのだ。


ただの勘違いであればいいのだが。


ひとまず話しかけてきた女の子達の自己紹介は終わった。


次は俺達の番だ。


「じゃあ、俺達も一応名乗っとくか。俺はエスタ、よろしく。」


「ナルキだよ~。よろしくね。」


「ぼぼぼぼくは、よよよよよヨロででです。よ、よろしく、、、」


ヨロは滅茶苦茶緊張していた。


声どころか全身が震えていて、寮で俺達と初めて会った時よりも酷かった。


女子と会話しているからだろうか。


そして問題はミナクール。


「ふふ、僕の名前はミナクールさっ。よろしくね子猫ちゃん達ッ、僕がカッコ良すぎるからって気絶しないでね。」


予想は出来ていたが、やはりキモかった。


見た目がモデルに顔負けしないくらい美形だからか、キモさに余計拍車がかかっていた。


女子達の方を見ると、なんだか微妙な表情をしていた。


あまりのナルシストぶりに、シア、ローズマリーは、側から見てもドン引きしているのがわかる。


一方、エリーゼはなんとも言えない顔を見せ、ノエルはというと、まるで王子様を眺めているかのように目を輝かせていた。


これは、彼がイケメンだから許されているのだろうか。


くそッ、こんな言動しててもなんも言われないとか、イケメンウゼェッ!


とりあえずお互い自己紹介を終えたので、話を戻す。


「皆も行くのか? 狩り。」


俺がそう質問すると、エリーゼが答えた。


「うん。あたし達も話し合って狩りしよ〜ってなってね。でも初めてだし、なるべく人数が多いほうが安心するから声をかけたの。これから同じクラスな訳で、親睦も深めたかったし。」


ナルキが言う。


「なるほどね。僕達は今から行こうって話をしてたけど、そっちも?」


「うん。実はね、昼ごはんは学食があるんだけど、先輩曰く、それも独自通貨が必要らしくて。」


エリーゼが話していると、ノエルが口を挟む。


「もうお腹すきすぎて無理。入学式の時からずっとお腹減ってたの、もう耐えられない。」


入学初日の昼飯も食えないのかよ。


それはさすがにひどくないか、オルエイ。スパルタっていうレベルじゃないぞ・・・?


「確かに、少し早い気がするけど、もう昼だしな。腹も減ってきたかも。」


「そういうわけで、早く狩りにいって、お金を稼ぎたいの。」


それは、確かに今すぐ行かないといけない案件だ。


俺がナルキの方を見ると、彼は察した様子で頷いた。


「じゃあ、もともと行こうって流れだったし、すぐにでも行っちゃおう!」


ナルキがそう言うと、皆同意して、狩りへと向かうことにした。

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