転生して転性!? ~キケンな世界に美少女転生させられたけど、それでも平和に過ごしたい~
小熊猫
第1話 異世界転生のいざない
気が付くと、目の前には純白の世界が広がっていた。
左を向いても右を向いても白一色、俺以外に何も存在しない異質な世界。
これは夢か――、そう考えた頃に声が聞こえてくる。
「ようやく起きたみたいだね、おはよう」
声は真正面から聞こえてくるけど、そこには誰の姿も見えない。
「僕を探しているのかな? 一応、君の目の前にいるよ。見る事は出来ないと思うけど」
どういう事? と問い掛けようとするけど声が出ない。
「端的に言うと、ここは死後の世界。故に、君は魂だけの状態さ。ああ、僕の事は死後の道先案内人とでも思ってくれたら良い」
死後の道先案内人から衝撃的な事を告げられ、頭が真っ白になった。
確かに、死後の世界と言われれば納得出来なくもない光景だけど、俺はまだ高校生だし、病気や怪我も無かったと思う。
「ああ、死んだ事が信じられないのか。まあ、その際の記憶は消去しているからね。君の今後を考えると無い方が良いし」
未だに混乱から抜け出せていないものの、今の言葉で二つ分かった事があった。
一つ、死後の道先案内人には、俺の考えている事が伝わってしまう事。
そしてもう一つ、俺にはまだ『今後』があるらしい。
「ほう。理解が早いね、高清水文尚君。それなら早速本題に入るけど、君には僕の管理する世界に転生して貰いたい。転生と言っても、基本的には元の君のまま、世界に突然現れる形になるけどね」
この死後の道先案内人が神、又はそれに類する存在なのは予想していたけれど、続いて告げられた言葉に驚きを隠せない。
異世界転生――、日本のライトノベルやゲームでは人気ジャンルの一つだったと思う。
友人の受け売りではあるものの、実際に色々と勧められ、俺自身もある程度嗜んでいたので、そう間違ってもいないはず。
「うん、理解がある様で良かったよ。無駄な手間が省けるからね」
死後の道先案内人改め、異世界の神様は納得した様に語る。
しかし、俺としては分からない事だらけだ。そもそも、何故異世界に転生する必要があるのだろう?
「ふむ。やっぱり説明ゼロで進める訳にもいかないか。まず、僕の管理する世界には魔法が存在する」
魔法のある世界と聞きロマンを感じるが、転生とどう結びつくのだろうか?
「ただ、上手く行っているとも言い難くてね。輪廻の環の様に魔力を循環させる仕組みを作る事で、魔法のある世界を創造したまでは良かった。だけど、どうしても魔力の一部はその環から外れて消失していく。それ故、何もせずに放っておくと、僕の世界から魔力は枯渇してしまうんだ」
なるほど、魔法も万能ではない様だ。しかし、話の意図がまだ掴めない。
「それ故、魔力を使っていない世界から定期的に魔力を融通して貰っている訳さ。それが君を転生させる理由だね」
それって……。
「魂が異なる世界を渡る時、それが魔力の通り道にもなる。即ち、君の魂と一緒に元の世界の魔力も自然に流れて来る感じだね」
なるほど。神様の世界を維持するために、俺の転生は必要なようだった。
「まあ君を選んだのは、より多くの魔力が手に入るからだね。元のまま転生させるのも同じ理由さ。君が転生を了解してくれるなら有難いし、ちょっとした願いなら聞くけど、何かあるかな?」
そう言われて、はっと気付いたけど、家族や友人は大丈夫だろうか?
「ああ、亡くなったのは君だけさ。周りの人間は、悲しみつつも普通に生活しているね。まあ、定命の者にはいずれ訪れることだし、そういうものだよ」
神様はあっけらかんと語る。
せめて別れの言葉だけでも……と思う気持ちはあるけれど、皆が普通に暮らせているのは朗報だし、それが分かっただけでも良しとする。
そして、それなら俺自身も生きるべく、この転生を受け入れる事にした。
「理解して貰えて何よりだ。なら早速だけど、転生の準備を進めようか」
神様がそう言うと、目の前に空間投影された画面が出現した。
今のところは、左上に『スキルポイント:370』とだけ表示されている。
「画面は見えているね? 今君が見ているのは、君の前世の努力・功績を僕なりにポイント換算したものだよ。これを、僕の世界でのスキルに変換出来るようにした。日本で鍛えた技能は、僕の世界では役に立たない物も多いだろう。でも、これまでの君の頑張りも正しく評価されなければアンフェアだからね」
なるほど、ゲームのキャラクターエディットと思えば良さそうだ。
生前は勉強・部活と手を抜かず頑張ってきたものの、それが異世界で役に立つかは未知数だし、その分をポイント化して活用出来るのは有難かった。
「一つ言っておくと、君個人のポイントは中々だと思うよ。そして、取得可能なスキルは今表示した通りだ」
神様がそう言うと、無数のスキルが目の前に表示される。
しかし、表示が乱雑で規則性が無く、確認するだけでも相当時間が掛かりそうに思う。
「ああ、現地の言語習得はサービスしておくよ。最後に制限時間を設けようか。この砂時計が空になったら転生させるね」
その言葉を最後に、神様の気配が消える。
目の前には巨大な砂時計が置かれ、その砂は少しずつ減り始めていた。
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