忘れたい夏

@20120002082

第1話

「明日花火しようよ」

もう、無いとわかっていたけれど、会いたい。彼にLINEした。

夏休みに入って3日目。体にじっとりと汗がまとわりつくような暑さが続いていた。私は朝からバンド練習があり、学校の音楽室でクーラーを付けながら、ギターを練習していた。その日は、バンドメンバー5人中、私を含め2人しか来ず、だらだらとおしゃべりをしながら練習していた。形的に花丸くんにはもう振られていた私だったが、逆に近い距離で接せられるようになり、気軽にLINEを送れるようになっていた。

会いたいなと思った私は、スマホを開いて「明日花火しようよ」とだけLINEした。10分後すぐに、「ん」とだけ返信がきて、私は既読をつけずにそれを見て、ギター練習に打ち込んだ。

「すいーそろそろ休憩しよ」「だね。お疲れさまーちい。」

スマホを見るともう1時間ほどすぎていた。すると、最近接する機会があってLINE交換したいと言ってくれた男子からLINEが来ていた。

「今度花火大会があるんだけど一緒にみない?」

一瞬びくっと体が熱くなった。ちいから「あいつ、すい推しだってよ」と聞いていたけど、そんなそぶりは全く感じなかったので、かなり驚いた。

タイミング。すご。

去年の秋くらいに私が花丸くんと付き合ってる的な噂が出てたらしく、そして別れたっていうのも出たらしい。なにも耳に入ってきていない私。笑笑。そして、実際何度も出かけはしたけど付き合ってない私たち。

誰も、今でも私が花丸くんのこと好きで、私が告って振られてることも、今も関係があることも何も知らないだろう。ただ何かは絶対あるだろうってみんな思ってる。

だからか。何も知らないから、彼がこのタイミングで誘ってきたまあとしても何も不思議ではないか。

とりあえず私の中には花丸くんとの花火しか頭になかったので、少しの動揺だけで終わった。そして花丸くんのLINEに既読をつけた。あ、

しまった。

待って、今日のつもりで送ったのに明日って打ってる。今日会いたかったのに。

「あ今日のつもりで明日って送ってた。今日は?空いてない?」

「空いてる」

よっしゃ。花丸くんに会えると思ったら嬉しくて、花唄を歌っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

忘れたい夏 @20120002082

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る