月の欠片を

篝火

拾った夜

 ボクは探している……


 月の欠片を……


 見つかるかわからない幻想ユメの欠片を……


---------------------------


 「これが、探し求めた『月の欠片』なのか?」

 は何処にでもある代わり映えのしない代物……


「ただのガラクタだよな!」

 誰かの言葉がよく響く。


「そもそも、月の欠片って何なんだろう?」

 別の人が尋ねてくる。


「わからない……ただ言える事は、満月の夜にしか手に入らないと言われている事だけだ」

 その問いにボクが答える。


「かぁ~、無駄骨かよ!」

 額に手を置いて青年が嘆く。


「還してください!」

 の持ち主の少年が叫んだ。


「ソレは、ボクの……の月の欠片なんです!」

 少年の言葉に違和感を感じる言い回しがされる。


「ダメだ!コレは俺たちが国王に献上するモノだ!」

 青年は無情な言葉を少年に言う。


「還してください!ボクの月の欠片を!」

 なおも、少年は勇気を出して青年の足にしがみついて取り返そうとした。


「離せ!これ以上邪魔立てするなら容赦しないぞ!」

 怒気を含んで青年が睨み付ける。


「ボクの月の欠片は、アナタ達には必要ないはずです!」

 青年の怒気に怯むことなく、少年はまくし立ててきた。


「あぁ~もう、めんどくさい奴だな!」

 青年は、少年を振りほどき蹴りを何発も喰らわせる。


「おい!やめろ、相手は子供だぞ!」

 ボクは、青年の肩を掴んで止めに入る。


「関係ない!邪魔するこいつが悪いからな!」

 青年が怒りに震えながら叫ぶ。


「か……かえ……還し……て……」

 少年は気を喪いそうにしながらも、何度もそう言う。


(そういえば、『月の欠片を奪いし者 破滅が待ち受けん』とか言われてたな……)

 ボクは少年を介抱しながら、そんなことを考えていた。


「おい、さっさと帰るぞ!」

 青年は苛立たし気に叫ぶ。


「ボクは、この子を介抱してから戻るよ……」

(月の欠片ってなんだろう?)

 頭の片隅に考えながら、ボクは青年の言葉に答える。


「かってにしろ!」

 青年は、そう言うなり女性を伴って帰っていった。


「行っちゃった……」

 ボクと気を喪った少年だけが残って彼らを見送った……。


---------------------------


 それから彼らを見たものは誰もいない。


 なぜなら、献上された『月の欠片』と言われたを見た国王が激昂して彼らを引っ捕らえたからである。


 は何処にでもある代物……


 は決まったカタチを持たない……


 は持ち主の想いによって定められる……


 の名前は『月の欠片』……


 持ち主の想いの結晶であるため、他人には無価値な代物……


 は『月の欠片』──別名『幻想ユメの欠片』……


 今宵も、何処かで誰かの『欠片』が生まれる──。


               完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

月の欠片を 篝火 @ezweb

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ