月の欠片を
篝火
拾った夜
ボクは探している……
月の欠片を……
見つかるかわからない
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「これが、探し求めた『月の欠片』なのか?」
ソレは何処にでもある代わり映えのしない代物……
「ただのガラクタだよな!」
誰かの言葉がよく響く。
「そもそも、月の欠片って何なんだろう?」
別の人が尋ねてくる。
「わからない……ただ言える事は、満月の夜にしか手に入らないと言われている事だけだ」
その問いにボクが答える。
「かぁ~、無駄骨かよ!」
額に手を置いて青年が嘆く。
「還してください!」
ソレの持ち主の少年が叫んだ。
「ソレは、ボクの……ボクだけの月の欠片なんです!」
少年の言葉に違和感を感じる言い回しがされる。
「ダメだ!コレは俺たちが国王に献上するモノだ!」
青年は無情な言葉を少年に言う。
「還してください!ボクの月の欠片を!」
なおも、少年は勇気を出して青年の足にしがみついて取り返そうとした。
「離せ!これ以上邪魔立てするなら容赦しないぞ!」
怒気を含んで青年が睨み付ける。
「ボクの月の欠片は、アナタ達には必要ないはずです!」
青年の怒気に怯むことなく、少年はまくし立ててきた。
「あぁ~もう、めんどくさい奴だな!」
青年は、少年を振りほどき蹴りを何発も喰らわせる。
「おい!やめろ、相手は子供だぞ!」
ボクは、青年の肩を掴んで止めに入る。
「関係ない!邪魔するこいつが悪いからな!」
青年が怒りに震えながら叫ぶ。
「か……かえ……還し……て……」
少年は気を喪いそうにしながらも、何度もそう言う。
(そういえば、『月の欠片を奪いし者 破滅が待ち受けん』とか言われてたな……)
ボクは少年を介抱しながら、そんなことを考えていた。
「おい、さっさと帰るぞ!」
青年は苛立たし気に叫ぶ。
「ボクは、この子を介抱してから戻るよ……」
(月の欠片ってなんだろう?)
頭の片隅に考えながら、ボクは青年の言葉に答える。
「かってにしろ!」
青年は、そう言うなり女性を伴って帰っていった。
「行っちゃった……」
ボクと気を喪った少年だけが残って彼らを見送った……。
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それから彼らを見たものは誰もいない。
なぜなら、献上された『月の欠片』と言われたソレを見た国王が激昂して彼らを引っ捕らえたからである。
ソレは何処にでもある代物……
ソレは決まったカタチを持たない……
ソレは持ち主の想いによって定められる……
ソレの名前は『月の欠片』……
持ち主の想いの結晶であるため、他人には無価値な代物……
ソレは『月の欠片』──別名『
今宵も、何処かで誰かの『欠片』が生まれる──。
完
月の欠片を 篝火 @ezweb
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