寝取りすぎた男

獅子吼れお🦁Q eND A書籍版7/25

寝取りすぎた男


 寝取りすぎた。


 最初は軽い気持ちだった。異世界転生してきたら誰だってハーレムが作りたいと思うだろうし、実際ハーレムのひとつやふたつあってもいいぐらいの働きはした。

(俺の活躍の話は本題ではないので、『異世界転生したら最強種族でハーレム無双 ~ え?女神も邪神も俺の獣王剣(隠語)でワンパンですが?』シリーズを読んでほしい)

 順調にハーレムを作るその過程で当然、寝取ることも多かった。なにせ、こっちには無敵の肉体、規格外の巨根(だって獣人だからね)、それに世界を救う勇者であるという後ろ盾もあった。だから、そりゃもう入れ食い状態だったし、寝取ることにリスクが全くなかった。

 世界中を旅して冒険を進めるたび、新しいポケモンを見つけたら捕まえるぐらいの感じでぽこぽこ寝取っていって、世界を救ったときには王都の後宮は栃木県ぐらいの大きさと人口になっていた。

 まあ、当然そこまで好き放題やったら反動がくるんだけど、幸いなことに俺は最強絶倫に加えて不老不死スキルまで手に入れていたので、NTRR(ネトラレジスタンス。俺に妻や恋人を寝取られた男たちが結集した組織)の猛攻も正直ダルい程度のものだった。

 NTRR(ネトラレジスタンス)が壊滅すると、世界と俺と俺のハーレムに平和が訪れた。文字通り世界中の美女を侍らせてのんびりスローライフ、俺の望んだハッピーエンドだった。


 うん、ここまではよかったんだ。

 みんな、このあとどうなったかわかる?


 NTRR(ネトラレジスタンス)は本当に世界中の血気盛んな男たち全員が結集していたみたいで、壊滅させたら世界に残った男が寝取られマゾだけになっちゃったんだ。

 結果、ハーレム以外でほとんど子供が生まれなくなり、今、世界の人口の維持はすべて俺が担っている。


「ほらっ!!タケル様っ!!腰が止まっていますよ!!一人あたり10ピストンまでです!!あとがつかえているんですからね!!女神のわたくしがこうしておっぱいをさらけだして興奮を煽っているのです!さっさとイってくださいまし!」

「あー、もしもし、ワシじゃ。邪神カースビホルダーじゃ。今日のぶんの種付けに遅れが出ておる。……わーっておる、本気でヤバくなったらワシが100人ぐらい一回で産むから。でもあれやると一週間寝込むからハーレム管理業務に支障が出るのよなあ……」


 のんびりスローライフどころの話ではない。もう誰とファックしているのかもぼんやりしてきながら、今日も俺は腰を振り続けている。

 思い返せば、だいたい国一個まるごと寝取ったあたりで話が変わってきたんだよな。最後のほうとか入れ食いどころか、女のほうからどんどん飛び出してきたしな。野生のポケモンかっつーの。あれは完全に若気の至りだった。なんかムシャクシャして、めちゃくちゃに寝取り散らかしてた。


 あの頃、俺は、何にそんなに飢えていたんだっけ。


「タケル様の射精確認!交代っ、交代っ!次の者前へ!」

「オレは元アマゾネス百人隊長が一人ヴリージア、我がアマゾネス国を滅ぼした貴様の汚らわしい子種など」

「あっ押してるんで今日はその口上なしです!即チンポで!」

「承知ッ!!❤❤❤❤」


 そうしてだいたい今日のノルマが終わるぐらいの頃、扉が大きな音をたてて開いた。

「伝令!」

 なんだなんだ。また魔物か?そんなん俺の遺伝子を継いだ子供だけで作った最強部隊を派遣すれば終わる話なんだから……。

「第1007嫡子部隊が、王都にて転生者を捕らえたとのこと!しかも二人、男と女です!」


 ■


「お前がもう一人の転生者か!彼女を離せ!」

 転生者だという男、ユキヒロが剣を構える。なかなかの男前だ。こうして歯向かってくる男というだけで刺激的に思える。

「そうよ!離しなさい!アンタみたいな毛むくじゃらのモノになんてならないんだから!」

 こっちも転生者だという女、ノドカが俺の手の中で体を揺らす。だが、それで俺の拘束を解けるはずもない。おっぱいが大きくふとももが太い。令和のキャラデザだ。

「フン、落ち着けユキヒロとやら。今ここで俺達最強チート転生者が限界バトルを繰り広げれば、街一つ荒野になる程度では収まらないだろう。いくら寝取られマゾしかいない街といえど、お前もそれは本意ではあるまい。大方、俺が女を独占してハーレムライフしすぎたせいで世界の均衡が乱れたとかで、上位存在が俺を倒すためにお前を派遣してきたんだろう」

「おおむねチュートリアルで聞いた内容どおりだが、だからどうした?!」

「あいにくだがハーレムの女たちは全員自分の意志で……洗脳とかそういうスキルとかじゃなくて……俺のものになっている。それを証明するため、この女をハーレムに招いて2,3日生活してもらうというのはどうだ?」

「ちょっと!何よそれ!アタシはユキヒロの……」

「なんだというのだ?」

「……っ!」

「お前もそれでいいな、ユキヒロとやら。大方ストーリー序盤で腐れ縁または幼馴染以上恋人未満といったところだろうからな、文句はあるまい」

「わ、わかった、その代わり何かあったらすぐに駆けつけるからな!」

 うーん。ちょろい。この手で140回ぐらい寝取ってるんだわ。


 ■


「ユキヒロ見てるー?あたしタケル様のモノになっちゃったから❤これから毎日死ぬほどケモセックスしまーす❤これは完全に自分の意志で洗脳などは使われていないオーガニックな寝取りでーす❤」

 そんな内容の速達魔法便で送ったビデオレター(寝取られマゾたちが開発した技術らしい)を送ったところ、数分後には転生者ユキヒロがドラゴンボールばりの速度で空中を突進してきて俺の寝室に突っ込んできた。

「貴様ッ!ノドカを返せ!」

「いやでーす❤あたしはタケル様のモノになったの❤ぶっちゃけ冒険の旅とかチートスキルあっても生活環境最悪でマジきっつかったし、もうここに一生いまーす❤」

「そ、そんなっ!」

「ここのハーレムってすごいの❤ウォッシュレットもあるしなんか知らないけどネトフリ見れるのよ❤」

 ノドカは俺の隣で令和サイズのおっぱいを俺の胸板に押し付ける。正直、チンポよりそっちが先に来るんだとは思ったけど顔には出さない。

「な、なんだとっ!?」

「ほら、転生する前に最後まで見れなかった実写版ワンピース❤見ちゃいまーす❤セックスしたあとダラダラネトフリ見るのサイコー❤」

「そういうわけだ、お前はそこで脳破壊されて寝取られマゾにでも成り下がるんだな」

「あっ❤ちょっと❤タケル様❤ほんとケダモノなんだから❤」

 スマホでごろごろしながら動画を見始めるノドカといちゃつく俺に、ユキヒロは体を震わせ……。

「貴様ァッ!」

 剣を振り上げて突っ込んできた。当然、お互い転生者同士。油断すれば、本気で殺されるだろう。


 俺は、自分の口がにんまり釣り上がるのを感じた。

 久しくなかった感覚だ。

 女を寝取られた男が、正当な怒りを燃やしてくる。

 奪い返そうと必死になる。

 そうか、俺はこれに飢えていたのか。

 俺から女を「寝取り返そう」と思えるような、同じだけの力を持った男を。


「その意気や良しッ!」

 俺はシーツをはねのけ、棍棒のような巨根を揺らしながら拳を構える。

「蛮王タケル覚悟ッ!貴様を殺しウォッシュレットとネトフリごとノドカを返してもらうッ!!」

「ほざけッ!!お前の短小チンポではもはやノドカを満足させることは敵わぬッ!!破ァーッ!!!」

 俺の闘気の奔流が刃となってユキヒロの鎧を切り裂く!しかし転生者のチートまみれの肉体までは破壊能わず、ぼろぼろと装備が剥がれ落ち……。


「「でかっ」」


 俺とノドカの声がそろった。


「あのー、タケル様、その……」

 剣を指二本で受け止める俺の下で、シーツを胸までひきよせたノドカがもじもじしながら言う。

「タケル様のも大変ヨかったんですけど、やっぱりあたしケモナーじゃないんで、全体でみるとやっぱりユキヒロのほうが好みかなあって……いや、寝取られた手前申し訳ないんですけど……あっちも気になるかなあって……」


「「黙れッ!!!」」


 今度は俺とユキヒロの声がそろう。


「ノドカ、お前のことは奪い返す……奪い返すがッ!今はこの男との戦いが先決ッ!!」

「応ともッ!!俺と同じだけの力、同じだけの『雄』ッ!!ここでただ寝取って終わらせてなるものかッ!全力で来いッ新勇者ッ!!お前の墓の前でファックしてやるッ!!」

「上等だァッ!!チートまかせの雑魚狩りにも飽き飽きしてたんだよッ!!てめえの皮剥いで敷物にした上でセックスしてやるぜェッ!!!」



 誰かが言った。


 寝取り・寝取られは、女を挟んだ男同士の関係であると――。


 思うに、俺は。


 対等に渡り合える相手ができて、初めて。


 こいつから寝取りたいと思う相手ができて、初めて。


 真にオスを滾らせることが、できたのかもしれない――。


「ウオオオオオオオオッ!!!」

「ガアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」


 二匹のオスが、今、ぶつかり合う。







「はー。バカらし。ね、みんなでバチェラー見ない?」

「ワシとしては普段の交尾からあのぐらいのテンションでいてほしいものじゃがなあ」

「え、アナタそれはちょっと性癖偏ってませんこと?」

「毎回裸踊りしてるやつに言われたくないわい」

 ノドカはハーレムに戻り、すっかり馴染んだ女性陣と画面を囲んで、ネトフリをつけた。





 おわり




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