再会
勝利だギューちゃん
第1話
「ごめん、待った?」
「今来たところ」
「じゃあ、行こう」
「うん」
好きだった女の子との、初めてのデート。
とても、ドキドキだ。
正直、もう付き合いたいとか、そういう気持ちはない。
ただ、高校生活最後の想い出を作っておきたかった。
「じゃあ、お腹すいたし、何か食べようか」
「うん」
彼女の方が、リードしてくれている。
さすがは慣れているようだ。
僕は初心者。
こういう時は、経験者に任せるのが吉だろう。
「じゃあ、次は何がしたい?」
「僕、映画みたい」
「OK」
元々は、遊園地に行く予定だったが、寒いのでやめた。
動物園も水族館も遠い。
スポーツ観戦はデートには向いていない。
なので映画となった。
話題になっていた映画もあるし・・・
「映画、良かったね」
「うん、感動した」
「じゃあ、お茶でもする?」
「うん」
喫茶店での他愛のない会話。
憧れていた。
帰り道
「じゃあ、私はここで、他に用事があるから」
「貴重な隙間時間を使わせてごめん」
「謝らないで。私こそ申し訳ない」
差し出されて手を握る。
温かく柔らかい。
「またね」
彼女は走って去って行った。
僕は見えなくなるまで見送った。
「またね」
だが、そのまたねがある事は、そうそうないのだ。
彼女の事は青春の一ページとして、心のアルバムにしまっておこう。
ん?
気が付いたら、僕はベットの中にいた。
自宅のベットだ。
「夢か・・・なんだろう?今になってあの子の夢を見るなんて」
そう・・・
もう、とっくに未練なんてなかったのに。
その日の午後、僕に電話があった。
「もしもし」
『あのう・・・〇〇くんですか?』
「はい。私ですが・・・」
『あのう・・・私は、△△と申します。ご無沙汰しております。〇〇さん』
電話の主は、あの女の子の母親だった。
何度か、お会いしたことがある。
懐かしい。
「娘さんは元気にしていますか?もう、結婚したんでしょうね」
『それが、実は・・・』
翌日、僕は彼女の家に向かう。
確か、以前に一度だけお邪魔した事がある。
勝手に押しかけて行ったのだが、彼女はいなかった。
当たり前。
でも、お母さんが手稲に対応してくれた。
僕の事は、聞いていたようだ。
既に、何人かの人が来ていた。
懐かしい顔だもあれば、初めての顔もある。
彼女は顔が広かったようだ。
そして、あの時以来の彼女との再会を果たす。
すでに、物言わぬ彼女は、棺の中で眠っていた。
しかし、安らかだった。
未練はあったが、悔いはなかつたと思いたい。
あの夢は、彼女からのメッセージだったかもしれない。
『久しぶりだね』
「うん」
『元気だった?』
「まあな」
『私はご覧の通り』
「うん」
『それだけ?冷たいね』
「わるかったな」
『まっ、君らしいけどね』
再会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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