悪役令嬢の姉ですがモブでいいので死にたくない
:海倉 のく/ビーズログ文庫
ダルマスの薔薇
1-1
目が覚めると、ベッドの
メイドを呼ぼうとして、声が出ないことに気がつく。体中が
窓の外はほんのりと青白く、それが降り積もる雪のためだと気がついた。
季節外れの雪に、庭の
ちょうどこんな雪の日だった。
私が死んだのは。
私がどんな顔をしていたのか、何度頭の中の本をめくっても思い出せない。
死の直前の
脳内のページをめくる私自身がつらくなってしまう、胃に差し込むような黒歴史。
当然のことながら、空気が一人分いなくなっても、きっと世界は何も変わらない。
特別な何かになりたいと
結局私は何者にもなれなかった。
私が熱のせいでおかしな夢を見たのでなければ、それが私の『前世』だ。
二つの人生を一つの
あっけなく交通事故で終わってしまった人生を閉じて、私は二冊目の人生、今現在の人生を開く。今日までの十四年間を共にした名前を、ため息と
「ダルマス
中央右寄りに立つ少女は、窓に映る自分自身よりいささか幼い。
雪に
私はこの人形のように美しい少女を知っている。というより、その
肖像画の中央に描かれた燃えるような赤毛の少女。
気の強そうな表情に
だが、それは彼女の
伯爵令嬢オディール――前世の記憶に同じ名前の少女がいる。
そしてそのライバルキャラクター、オディールは悪役よろしくソフィアの
もちろんそんな犯罪
今生における、私の妹である。
悪役令嬢オディールの体の弱い姉、それがジゼルだ。
攻略対象の一人、リュファス=クタール
そのため、ジゼルがヒロインを害することはないのだ。
主にソフィアいじめにいそしむのはオディールである。オディールが断罪されれば同じ伯爵家なので没落も道連れなのだが、それ以上に困ったことがある。
ジゼルはとにかくよく死ぬのだ。
例えば、ジゼル的にはメインルートともいえる侯爵令息リュファスのルート。
ハッピーエンドではなんとストーリーの
愛はなかったがそれでもジゼルに何もしてやれなかったと落ち込むリュファスをソフィアは
そしてバッドエンドでも死ぬ。ソフィアと結ばれなかったリュファスは心を
また、他のルートでもモブとして登場するが、ほぼ死ぬ。
危険なことが起こった時、誰かの魔術が暴走した時、暴動が起きた時、毒が盛られた時、なんやかんやと死ぬ。これから起こることやばいよ! ピンチだよ! といったイベントを
周回するごとに「え、また死ぬの?」などとうっかり声に出てしまったくらい死ぬ。
炭鉱でガスが出ていないか試験するためのカナリアみたいな
「死にたくないなぁ」
ぽつり、つぶやいた。
死にたくない。
ほぼジゼルが登場しないルートでも、結局はオディールがやらかすので実家の没落は
頭が痛い。熱のせいだろうか。ベッドにもう一度横になった。
どうしたらいいのか。
思い出した限りのルートでだいたいジゼルは死んでいる。思い出せないだけで『そこに人々が
だがどのルートでも。死因も没落の原因も、私の妹オディールにある。
ならば、妹が悪役令嬢にならないよう今日から調教、もとい教育していけば良いのでは。
しんしんと雪が積もっていく。
雪明かりの窓から目を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます