第2章 la chance sourit(ラ・シャンス・スゥリ)

第1話 lumière d’espoir 希望の光



 これまでのあらすじ。


 等価交換による衣装のおかげか? はたまたツバキの洋服を作るセンスが良かったのか? それとも普通にアニエスが可愛すぎる天空魔人族てんくうまびとぞくとなったからかは不明だが、モテ期、到来のアニエスは、関所のマメタンクに絡まれてしまった。

 銅貨を取り戻し、別の街に向かおうとした時、チンピラ風イケメンの執事バトラーに遭遇。

 果たしてこの執事は敵か? それとも味方なのか? 




「お兄さん強いね。 どこの流派だい?」

 屈託のない笑顔で僕に話しかけるチンピラ風イケメンの執事バトラー

「言ってもわからないと思うけど、答えないとダメかな?」

「ハハハ! そりゃそうだ。 お兄さんの剣技は帝国でも見たことないからね。 聞いてもわからないのは確かだ。 でも、今後のために教えてもらえないかな?」


 ピコン!

「ピコンです。 」

「はい、知ってます。」

「マスター。 あのチンピラですが、先ほどの殺気とは裏腹に、今は敵意はなさそうにみえます。 あのチンピラと仲良くなれば街に入れるのではないでしょうか?」


「あの、ツバキ様。」

「何? どうしたのアニエス。」

「そ、その…。 返事は…いただけないでしょうか?」

「返事?」

「そんな…。 仕方がありません! もう一度言わせて頂きます! わたくし、アニエスはツバキ様をお慕いしてありましゅ!」


 盛大に噛んだー!!


「あ、ありがとう、アニエス。 僕も君の事は大事だし、家族のように思っているよ。 これからも一緒にいようね。」

「はあ…。 ツバキ様…。」


「アハハハハ! 君たち面白いね。 俺との会話を勝手に中断して、告白タイムなんて! アハハハハ!」

 

 ですよねー。

 呆れちゃいますよねー。

「えへへ。 ごめんね。」

「はー。 まぁいいや。 面白いね君たち。 今日は帰るけど、そのうちまた会おうぜ。 その時に君の、ツバキ君でいいのかな? 流派を教えてね。 それじゃ。」


 チンピラ風執事は風をまとい、消えた。

 風と闇の属性かな?

 あとは重力の属性もありそうだな…。

 重力は僕も欲しいところだ。


 ピコン!

「マスター、ピコンです。」

「はい、知ってます。」

「アニエスがマスターから離れませんね。 マスターも満更まんざらではないようで。」


 はい。 むしろ、嬉しいです。

 恥ずかしながら、彼女いない歴、イコール年齢ですからね。

 こんなことを口にしたら、ピコンさんは大フィーバーだろうけど…。


 ピコン!

「マスター、ピコンです。」

「な、何?」

「街に入られますか?」

「そうだね。 せっかくだし、行ってみようか。」


「ツバキ様、街には入られますか?」


 アニエスが、嬉しそうに僕にといかける。


「えっ? うん。 入ろうかと思う。 この世界のご飯も食べてみたいしね。」

「と言う事は宿に泊まるのですね? わたくし、アニエスは感無量でございます。」


 ピコン!

「ウェーイ! マスター、ウェーイ!」


 どした? 2人とも変だな…。



 そして、僕たちは銅貨2枚を回収したにも関わらず、無事にブラックフライの街に入った。


 街に入り、ピコンさんの助言から、冒険者ギルドへ向かうことにした。

 昨夜のモンハンで獲得した素材を買取してもらう事と、冒険者の登録をするためだ。

 しかも、ギルドに登録をすると身分証が貰え、そのギルドカードがあれば、各街の通行税が無くなるらしい。 これは非常にお得だ。

 ただしギルドに入ると、熟練冒険者に絡まれるお約束があるので、気をつけて下さいとの事だ。

 

 

 そして僕たちは冒険者ギルドに到着した。


 ドアを開け中に入る。

 昼間っから酒を飲んでいる連中がいる。

 しかも、アニエスを見て、『ヒュー!』と言っている男もいる。


 とりあえず、登録の受付窓口を探すことにする。 といっても、窓口らしき場所が見当たらない。

 とりあえず、カウンターにいる男に聞いてみるか。


「すみません、冒険者登録をしたいんだけど、窓口はどこですか?」

 僕がカウンター内の男に聞いたが、タバコを吹かして無視をされた。


「ダメだこの街…。 他の街に行こう。」

 僕がそう言うと、テーブルで酒を飲んでいた男の1人が僕の前に立ち塞がった。


「あんちゃん、何だその言い草は? 俺たちにケンカを売っているのか? アーン?」

 

 そう言いながら、僕に殴りかかってきた。


 僕はその拳を受け、思いきり握りしめた。


「痛たたた! 放せクソガキ!」

 僕に暴言を吐く酔っぱらい。

「離してほしい時は僕になんてお願いをするんだ? 言ってごらん?」

 そう言って、僕は尚も力を入れる。


「ふざけるな! お前ら、コイツをやっちまいなさい!」


 コイツもお姉語かよ!

 この街で上に立つ者は皆、お姉語を使うのか?

 それはさて置き、オネエの一言で荒くれ者らしき連中が僕の周りを取り囲んだ。


「その女には手を出すなよ。 後で楽しもうぜ! うぇーへっへっへっへっ!」


「どいつもコイツも頭にくるな! アニエスは僕の大事な人だ! お前たちがアニエスに触れていい訳が無いだろ!」


 余りにも理不尽な展開に先ほどの城門の時、以上に腹が立った!

 僕は我も忘れ、拳でモブの冒険者どもを殴り倒していった。 


 1人、また1人と床に倒れ込む男たち。

 カウターにいた男が俺にナイフを投げて来た。

 僕はそのナイフを人差し指と中指の2本で挟み、受け止める。

 バーテンの男は投擲とうてきに自信があったのだろう。 僕に受け止められたナイフを見て、後ずさんだ。

 受け止めたナイフをバーテンの男の鎖骨にめがけ投擲する。 プスッと鈍い音をたて、男の鎖骨に突き刺さる。 ストライクだ。


 最初に言いがかりを付けてきた男はいつの間にか、大きな剣を持ち出していた。


「テメェ、ぶっ殺してやる!」

「人を殺す気でいるなら、自分も死ぬ覚悟は出来ているんだろうな?」


 僕の話を無視し、その男は大剣を振り上げた。

 僕はプラチナソードを取り出し、男の両腕を切り落とした。


 血飛沫をあげ、叫ぶ男。


「うぉー! 殺してやる! 殺してやる!」


 両腕を切られた男は俺を睨みながら叫んでいる。


「両腕が無くなったのにどうやって僕を殺すんだい? お前達なんか、死んで神に償え。」


 そう言って、僕はプラチナソードを振り上げた。


「ごめんなさい! 許してください! 改めます。 こんな事は二度と致しません!」


 手のひら返し…。

 そんな言葉が僕の脳裏をよぎる。

 当たり前だが、僕はこの男の首を胴体から切り離した。

 この光景を見た男達はドタバタとギルドの出口に向かう。

 この後に及んで逃げる気か?

 逃げる男たちよりも先に、僕が出口を塞いだ。


「1人残らず、お前達を殺すことにした。 今までもこんな事をやってきたんだろ? お前達に生きる価値は無い。」


「うわー!」


 1人の男が叫びながら剣を振り上げ、僕に向かってきた。 走りながら剣を振り上げている。 剣の修行などしたことが無いであろう。 剣を持つ事で、強くなったと錯覚をした男だ。 この男は殺さずに悔い改めさせよう。

 まずは向かってきた男の両足首を斬る。

 ズザー! っと前のめりで転ぶ男。 立ちあがろうとするが立ち上がれない。 彼の両足はすでに足首から下は無いのだから…。

 自分の足首が無いことに気づく男。


「うわー! 無い! 無い!」

 男は大きな声で騒ぎ始めた。


「うるさい、黙れ。」

 騒いでうるさいので、男の喉ぼとけにある声帯を斬った。 

 声帯を斬られた男は「ウガガガ。」と言っている。


「これで静かになったな。 さあ! どんどんお前たちを殺していこう! 僕の気分次第だけど、この男みたいに生かしておく時もあるからな。」


 先ほどまで威勢の良かった男たちが、震えながら座り込んだ。


「ああ、そうだ。 次はバーテンのお前にしよう。 僕に投擲をしたよね? 毎回、あんな感じで、僕に殺された男の援護をしていたんだろ?」

「ちっ、違う! 脅されていたんだ!」

「じゃあ、何で僕が話しかけた時に、僕を無視したんだ?」

「だから、脅されて…。」

「もういい。」

 僕はバーテンの首を斬り落とした。


 ドタバタと裏の出口に向かう男たち。

 どうやら隠し扉があったようだ。

 生き残りの5〜6人は、そそくさと逃げてしまった。

 どうせすぐに仕返しに来るだろ…。


 ピコン!

「マスター、ピコンです。」

「ピコンさんが言いたい事はわかっている。 アイツらは今まで、何人もの人間を殺している。 さっきのマメタンクもそうだ。 これが人間の国の生き方なのか?」

 ピコン!

「残念ながらマスター。 マスターが暮らしていた世界とは全く別です。 人間の国はこのような事が普通です。 魔族や獣人は特にこのような仕打ちを受けます。」


「アニエス、おいで。 僕の近くに来て。」

「はい、ツバキ様。」

「アニエス、これは命令だ。 僕の事は様をつけるな。 ツバキと呼べ。」

「……。 了解致しました。 我が主人、ツバキ。」


 ツバキと呼ばれ、僕はアニエスを抱きしめた。

 

「アニエス、こんな連中がいない世界を一緒に作ろう。」

「はい…。 ツバキと一緒ならば、迷いません。」



 ピコン!

「ウェーイ! マスター! ウェーイ!」





 













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