第15話 私は運命の人を守るわ
「復讐はたいしたことはしないのよ」
私はニヤリと笑った。
「この国は神の守護がある。それは代々ヴェルトミュラー家の聖人が祈っているからでしょ? それを忘れて、そんなことは迷信だなんて言っている国民や蔑ろにし亡き者にして自分達が恩恵を受けようと思っている奴らに神は怒っているはずよ。ねっ? 神様」
私は空を見上げた。雲の合間から光がキラッと輝いたような気がした。
「スティーブも死んで楽になろうなんて思ってないわよね。あなたはまだまだリュディガー様に仕えて頂戴。あなたのような有能でリュディガー様を思ってくれる人を死なせたりしないわよ」
私はマイクとメアリー、ハンナを見た。
「さぁ、そろそろバーレンドルフ王国に戻りましょうか」
「し、しかし……」
リュディガー様はまだ戸惑っているようだ。
「リュディガー様、この国に未練があるのですか? ヴェルトミュラー公爵家の存続ですか? それなら我が国で新しくヴェルトミュラー家を起こせばいいではありませんか。スティーブに家令を命じます。そうね。リュディガー様には王配になってもらわなきゃ行けないから、私達の子供のうちの誰か、聖人の力を受け継いだ者がヴェルトミュラー家を継ぐことにしましょう。」
私の言葉にリュディガー様もスティーブもポカンとしている。
「リュディガー様の気持ちも考えないで勝手に決めてごめんなさい。でもあなたは私の運命の人なの。私のことなんて好きじゃなくてもいい。私は何が何でもあなたを死なせないわ。あなたが死んだら私の魂も死んでしまう。バーレンドルフ王国で私の王配になってほしいの。子供が生まれたら、好きな人と一緒に暮らしても構わない。私はあなたが好きだけど、あなたを縛る権利はないもの」
私はリュディガー様の手を握り瞳を見つめ、自分勝手なわがままを彼に突きつけた。少し不安になったが彼は私の瞳を力強く見つめ返してくれた。
「好きな人はハイデマリー殿下、あなただけだ。私の運命の人はあなたしかいない。私はこれでも聖人だ。神からの神託を感じることができる。初めて会ったとき、稲妻が身体の中を通り抜けた。ずっとなんだろうと考えていたが、この国のことではなく、あなたの幸せを祈り始めた頃、神託が降りた。あなたは私の運命の人。運命の人を守れと」
「守り方を間違えないで」
私は小さく呟いた。
礼拝堂の扉付近で外に気を配っていたマイクが祭壇近くにいるスティーブに近づき肩をぽんと叩いた。
「そうだな。リュディガー様もスティーブも守り方を間違えている。守るとは元気で傍にいることだ。身を挺して守るなんてただの自己満足だよ。まぁ、共に死ぬのはOKだけど、守るべき相手を残して死ぬのは守ったとは言わない。亡くなった後ひとりにするつもりか? 天寿を全うするまで傍で守るのが守るってことだ。スティーブ、まだまだ長生きしなきゃな。リュディガー様、ハイデマリー様は長生きしそうなんでそれ以上に生きて下さいよ」
へへへと笑う。
「リュディガー様、私達は同じ気持ちだと思っていいのですか?」
リュディガー様は頷いた。
「私は身も心もハイデマリー殿下のものだ」
そこからの私の動きは早かった。私達は幻影魔法で私達に姿を変えた暗部の者達を残して、移動魔法でバーレンドルフ王国に飛んだ。
「お父様、お母様、ただいま。王配を連れてきちゃった」
私達が消えたあとのプレル王国の様子を大きな魔石で作った魔道具の鏡で見る。
私に化けた暗部の者がマインラートに精神拘束薬と媚薬を飲まされた。
もちろん全く効いていないが効いているふりをする。
あの者達はマインラートに私を落とさせ、バーレンドルフ王国を自分達のものにしたいらしい。
イルメラはどうするんだ?
そして側妃は国王にリュディガー様を処刑してほしいとねだっている。
リュディガー様を処刑か。ほんとにバカだな。
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