第8話 私は王女(イルメラ視点)

 私はプレル王国の王女。


 側妃の娘だけど、正妃の子供が亡くなってから正妃は身体の調子が悪くなり、離れで静養しているので、実質お母様が正妃みたいな感じでなの。


 可哀想だけど、亡くなったものは仕方ない。気持ちを切り替えて前を向かないといけないのに、いつまでもグジグシして嫌な感じなのよ。


 他に子供はいないから、多分私が次期国王だと思う。女だから国王じゃなく女王ね。


 でも、私は勉強が苦手。王太子教育はとりあえず受けているけど、あまり進んでいない。賢い人と結婚すればいいかと思っている。


 私は子供の頃からの婚約者はいるけど、あんまり仲は良くないの。


 婚約者は公爵令息。守護の力を持つヴェルトミュラー公爵家の嫡男。我が国はヴァルトミュラー家の長子が持つ守護の神の力で安寧だと昔から言われている。

 でもね、最近はそんなの迷信じゃないかと言われているの。だって彼は別に何もしていないもの。


 彼は亡くなった、先のヴァルトミュラー公爵夫人が産んだ長子。小さい頃に馬車の事故で祖父母と母が亡くなり、一緒に乗っていたのに彼だけが生き残ったの。やっぱり守護の神がついているから助かったとかもてはやされたけど、偶然だと思うわ。

その後公爵は私の母の妹と再婚したの。


 私の婚約者、リュディガーって名前なんだけど、彼は腹違いの弟のマインラート様や後添いの叔母様を嫌って、ぞんざいな態度をとるそうなの。我儘で傲慢。時には暴力も振るうらしいわ。食事も「こんなもの食べられるか!」って、食べないのですごく痩せてるのよ。婚約者の私にプレゼントひとつくれないしね。


 私は母親同士が姉妹だということもあって、リュディガーより弟のマインラート様と仲がいいの。


 マインラート様は優しいし、いつもプレゼントをくれるし、カッコいいし、賢いから、好きなの。


 リュディガーとの婚約を破棄してマインラート様と結婚したいわ。母も叔母様も賛成してるのよ。


 それに正妃様がマインラートや叔母様が迫害を受けていると知り、リュディガーを礼拝堂に幽閉してくれたの。


 病弱で、役立たずなお飾りの王妃だけど、リュディガーを捕らえて幽閉してくれたのは良かったわ。これで婚約破棄できそうね。


 マインラート様だって叔母様から産まれた長子だし、ヴァルトミュラー家の守護の力を持っているはず。私がマインラート様と結婚すれば全てうまくいくのよ。


 リュディガーは……そうね、今、留学で我が国にきているバーレンドルフ王国の王女のハイデマリーに押し付けちゃおうかしら、彼女はまだ、リュディガーの本性を知らないみたいだし、リュディガーから我が国の神について勉強してるらしわ。習うならリュディガーより、マインラート様の方が良いと思うけどね。


 短期留学の子だから、べつにちゃんと教えなくてもいいし、忙しいマインラート様を煩わすこともないと思ったのかもね。

 

 お父様はお母様にベタ惚れで言いなりだし、もう正妃様は弱ってるから亡くなったらお母様が正妃になっちゃうかも。そりゃ私も側妃の娘より、正妃の娘の方がいいわ。


 とにかく、叔母様もマインラート様もリュディガーが幽閉されてから怯えなくて良くなってよかったわ。


 あんなやつ、罪に問えばいいのに、お二人とも優しいから幽閉で許しちゃっているの。なんでかな? 何かに使えると思っているのかしら?


 まぁ、私は早く婚約破棄になって、マインラート様と結婚したいの。

 ハイデマリーに押し付けよう。私は愛しあう二人のために身を引く慈悲深い王女ということにするのはどうかしら?


 いいわ、いいわ。そうしましょう。


 そうと決まったら、マインラート様にこの計画を教えて協力してもらおう。


 私は女王になるわよ。そうしたら素敵なドレスや綺麗な宝石が今より手に入るわ。世界中の人が私に傅くの。


 楽しみだわ〜。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る