梟さんリクエスト おまかせ
へびづかすず
第1話
まばゆい光に網膜が焼けそうだ。
閉じていたまぶたを隠すように腕の中に顔を埋める。
この学校で僕の睡眠を邪魔するやつなんてもういないと思っていたのに、
なんだってこんなちゃちな嫌がらせをするんだろう。
とおもったら続いて浮遊感。まるでNASの無重力体験スペースに入った時のようだ。
空中で眠るのは、努力してもうまく出来なかった。苦い思い出の一つを思い出してげんなりした。
「広瀬くん!おきて!おきてったら!」
「さっき一瞬起こされたからむり」
「こら!だめだってば!流石にまずいよ!今誘拐されてるの私たち!誘拐犯の前ですやすやしないで!」
「誘拐ならなおさらむやみに傷つけられないから大丈夫だよ」
「御曹司ブラックジョークやめて!睨んでるわ!時代遅れの格好をして、今にも腰の剣を抜こうとしているのよっ!ほら!5分でいいから起きて!!」
いいかげんにうるさいな。
一日のうちほとんど開く予定のない目を開いて、僕を揺さぶる委員長ちゃんをどけて前を見る。
僕と同じ制服を着た人たち、多分クラスメイトのおくに、偉そうな椅子に座った老人と
その隣に立つ金髪が僕を射殺さんばかりににらんでいる。
ちなみに射殺すの語源は飛び道具で人や動物を殺すことなので、剣で殺そうとしている場合は使用しちゃいけないんじゃないだろうか?なんてどうでもいい考えが浮かんで消えた。
というか変わった誘拐犯だ。中世のコスプレに、城。というのは
変態なんだなって思うだけだからまだいいとして。
誘拐した僕たちを拘束しないし、持ち物は取り上げないし。誘拐をなめているとしか思えない。
僕の足下で腰を抜かしている委員長ちゃんを起こしてあげる。
一応このピンチな状況を教えてくれた恩人である。
起こされたのは許せないけど、一応感謝はしておこう。
「よくも起こしてくれたね、ありがとう」
「よくもは余計よ広瀬くん。…あの、自分を王族といいはるコスプレ集団ですけれど、本気で思い込んでいるから話を合わせた方が無難だとおもう。あっ、もちろん広瀬くんの自由で構わないけど」
「広瀬!てめぇの番だ!前に来い!」
その声を聞いた途端にふかふかのベッドから落ちたときの気分になる。
あぁ、ほんと。こいつまだ生きていたんだ。
「気安く呼ぶなよ底辺の分際で」
「黙れ!この異世界じゃ実家の権力なんざなんの意味も持たねぇんだ!さっさと鑑定をうけろよ!ちなみに俺は聖剣士だ!S級の超レア職業らしいぜ!」
「いまいち状況がわからないなぁ……誰か三行で説明して」
「異世界転移、鑑定で職業、まじっぽい」
「由吉ありがとう。これお礼」
いつもどおり鞄からお菓子を渡す。
僕の家のパティシエが僕のために作ってくれたクッキー。
僕の口に入ることはめったにないのに、毎日ご苦労だなぁ。と思っている。
「名を名乗るがいい。30人目の異世界人よ」
「やばい。もう眠い」
「廣瀬くん5分まであと2分もあるわ!がんばりなさい。」
「今日しゃべりすぎたなぁ…」
「もうよい!早く鑑定を終わらせろ!」
でた。偉い人特有の大声。
心に余裕を持つのが真に上に立つ物だって帝王学でならってないのだろうか。
かわいそうに。
いや、まぁそもそも人を同意なく連れてくる行為は犯罪なのでやめましょう。という人としての常識が備わってない時点で底辺以下のゴミだった。じゃあ仕方ない。
「でました!この者の職…しょ、なぁぁぁぁぁ」
「もう2分たった?」
「空気読んで廣瀬くん」
僕のてを握った怪しいおじさんが後ずさる。
体内時計はもう17時くらい。そろそろ下校のお迎えが来る頃だ。
由吉の言うことが確かなら、ここは異世界。その場合誘拐された僕たちに帰り道はあるだろうか。
まだ新しいふかふかのベッド堪能しきっていないのに。
「『魔王』です!!こやつの職業は魔王です陛下ぁぁ!!」
「よし五分たったし寝るね」
「あんた馬鹿ぁ!?おい廣瀬!寝るな!死ぬって!あんた最悪の職業引いちゃったって!皆、落ち着いて!誘拐犯の言うことと、いつも寝ていて、起きたら起きたで偉そうでどうしようもなく最低最悪のくそ野郎だけど倫理観は無駄にある一応ククラスメイト、どっちが信じられるかわかるわよね!?わかったら、」
腹部に衝撃がきてすぐに頭と背中がいたくなる。
こんなかったい床で死ぬのはいやだなぁ。眠いけど、
「黙れ!!!勇者の卵たちよ!最初の命令だ!殺せ!!魔王を許してはならぬ!!安心せよ!ここにいる第一王子は『勇者』の職業をもっておる!おまえたちは、そやつを拘束せよ!」
「寝てるし、殺す必要ないし、犯罪者はおまえたちだし」
「篠原!由吉!異世界でこいつにこびる必要なんてないんだ!目を覚ませ!むしろ勇者がいるこっちがわにつくべきだろ!?」
梟さんリクエスト おまかせ へびづかすず @hebizuka_suzu
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