あのねリクエスト。夏/朱々主人公/デレ

へびづかすず

第1話

それは偶然だった。

明日から夏休みという。タイミングは、確かに告白をするにはうってつけだ。


放課後の教室で、可愛いと評判のあの子から手紙を受け取って嬉しそうに笑う君をみて、

朱々は心を決めた。



女の子なんだから、という言葉が昔から嫌いだった。

反抗するようにあまり女の子らしい服装をやめた朱々に周りの大人たちがとやかく言う中、

君だけは『そういう服も似合うぜ』って笑い飛ばしてくれた。


この気持ちに名前を付けるなら”恋”だと思う。

自信はない。だって、幼い頃から一番の大切な人として、友達だった。

この関係はずっと続くって信じていた。

でも、ほかの女の子が君を奪ってしまうって考えたら、それだけで、無理だった。


私はおばあちゃんの着付てくれた一張羅を身にまとい、

君の家のインターフォンを鳴らした。きっと不思議に思って駆け下りたのだろう。

いつもより乱暴な足音が聞こえる。


心臓が痛い。

君は、なんていうかな。可愛い、かな?行ってほしいな。君になら、”女の子”としてほめてほしいと、そう思うから。


玄関が開いて、君と目が合う。

何が楽しいのかいつも笑っている君の、そんな表情が見れただけで、朱々は胸がいっぱいになってしまった。


「浴衣じゃん」

「うん」

「なんで?」

「君にみせたくて」

「…だから、なんで」


「好きって言いたくて」


口に出したら、なんだか幸せで、泣いてしまった。

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あのねリクエスト。夏/朱々主人公/デレ へびづかすず @hebizuka_suzu

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