火の神様、幻影術士を雇う

岡田剛

プロローグ 火の神様、目覚めの前の夢

 かつて私が生きた世界。

 かつてともに笑った仲間。

 かつて戦った敵。

 かつて私を愛してくれた人。


 そして私が愛した人。


 みんな消えてしまった。

 悲しみの感情、寂しいという気持ちはおおむね一人になったときに去来する。

 それなのに一人で抱えきれない。


 おかしいな。

 私はずっと一人だったはずなのに、どうしてこんな気持ちになったのだろう。


 彼が私の胸を貫いたからか?


 最後の瞬間に目を伏せ、私と目を合わせてくれなかったからか?


 それとも、彼が見ていたのは私ではなかったからか?


 では誰を見ていたというのだ。

 私しか知らない彼の表情、彼しか知らない私の笑顔、彼の心臓の音が私の胸の中から聴こえるように感じるほど近くにいた、私以外の誰を。


 寒い。

 私を温める火は消えてしまったのか。人々はもう、私を忘れてしまったのか。


 まさか誰もいない? 目覚めのときが近いのか。


 それは嫌だな。目覚めるのが、ではなく誰もいなくなってしまったことが。


 私はたぶん、まだ彼の言ったことを信じているのだろう。

 彼が私を見ていなくても、私に向けて言ったのではなくても。


 私が聞き、私が記憶し、私が信じた。

 だからこれは私の願いだ。


 彼はこう言ったんだ。


「次に目覚めたとき、俺たちは必ず、また会える」

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