第30話 ダンジョンに潜むもの
ルーとゲラルドが邂逅してから3日後。
ついに、ダンジョン探索の日がやってきた。
情報によると、第10階層でギルドのパーティが壊滅させられている。
が、実際のところ、そこからは一人でも帰還できているわけだから、1パーティで潜ればまずは問題ないレベルだともいえる。
ゲラルドはその生還者である、ロビィ・カノックからいくらか情報を収集しておいた。ロビィの話によると、壊滅させられた元凶は「なにか得体の知れないもの」だったという。前後の話から推察するに、おそらく、第10階層までのモンスターたちのラインナップからは予想もつかない程強力な魔物か魔獣が現れたのだろう。
実際、ロビィ自身はその正体を見ていない。
仲間のガーランが残した言葉、「コイツは無理だ」だけが唯一の手掛かりだ。
「確かにここまでは、大したレベルのモンスターには遭遇してませんね。このレベルであれば、ロビィたち
と、言ったのはヘルメさんだ。
ヘルメ・シンシア――冒険者ギルド受付係統括のこの麗らかな女性は、実は
エルト、ルー、ゲラルドの3人では若干バランスが悪い。エルトは魔術師、ゲラルドは戦士、ルーは「
「わしも魔力が戻れば
というのがルーの言い
そういう訳で、後衛の
話を聞いたヘルメは、
「それなら後衛の治癒術師が必要でしょう。マスターも、かなりブランクがありますから、勘が戻るまではあまり当てになりませんでしょうし――」
と、そそくさと準備を進めてしまったらしい。
「――じゃがの、やっぱり、何かいよるようじゃな。奥に進むにつれて魔力の集束が強くなっておる」
とルーが返す。
「うん。それは僕にもわかる。そろそろ警戒しておく方がいいかもね」
とエルトが応じた。
現在4人は、当該ダンジョンの9階層まで下りてきていた。
ここまではさほど脅威となるものに遭遇することはなく、通常の中級クラスダンジョンと何ら変わりはない。
ダンジョン特有の
「しかしなんだかなぁ。ここまではなんつーか、拍子抜けだよなぁ。確かにこの流れだと、そんな強力なものに出くわすなんて警戒はしない雰囲気になるわなぁ」
とゲラルドが言った。
「しかし、実際、その後もロビィのパーティメンバーたちは戻ってきていません。さすがに3日も過ぎているのですから、無事なら帰ってこれるはずです」
とはヘルメさんだ。
ロビィのパーティメンバーの3人は、結局戻っていない。ロビィの話によれば、いきなり消えたのが二人、そして最後の一人は駆け出してゆく
そしてその最後に駆け出して行った、ガーランの言葉が、「コイツは無理だ」だったのである。
「――あ、あれが10階層へ続く階段だね。本当に一本道だったなぁ」
と、エルトが指さすのに、ゲラルドが応じる。
「そうだな。通路もずっと広いし、ここまでなら青銅級でも問題なく探索できる初中級ダンジョンだが……。さあて、次の階層では問題のソイツに出会えるかなぁ」
エルトの指さす先に階下へ続く幅約3メートルほどの広い階段が見える。
一行はその階段を下へと向かう。
階段の形状はまっすぐ下へと続いているものだ。幅は約3メートル天井までは3メートルほどという具合だ。
石畳の階段であるが、ごつごつとしていない平らなものである。
階段の4分の3ほど降りてきたころ、階下のフロアの様子がなんとなく判明した。どうやらそれなりの広さのある
その時、一行に重くのしかかるような重圧がかかる。確かに何かがいる。
10階層、階段の先から明らかに異様なほどの魔力の集束を感じたのだ。
階下に近づくにつれ、そいつの正体が徐々に現れる。
「――どうやらお出ましのようじゃな。たしかにコイツはなかなかに厄介じゃぞ?」
ルーが言うなり、腰を落として戦闘準備に入る。
「なるほどねぇ。確かにコイツは冒険者たちには手に負えないかもな」
エルトもまたローブのフードを頭から外し、腰の短杖に手をかける。
「マスター、あれは――」
「なんてこった――。これは確かに放っておけねぇ……。まさかこんなところにコイツがいるなんてな――。『
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