第123話:宣言

「そうだ! 父さん!」


 イツキは席から立ち上がった。ファッションこそ違うものの、立った状態でイツキとガクが並ぶと、醸し出す雰囲気が似ており、やはりこの2人は親子なんだなぁ、とナナは思った。


「僕もパチンコつくるよ! んでさ…、パチンコを日本が誇る文化にするよ!」


 そう言うイツキの目と口調と言葉はどこまでも真っ直ぐだった。


「"日本が誇る文化"か…。そうか、そうか。イツキ! お前、大きく出やがったな、このやろー!笑 しばらく色々悩んでたように見えたけど、何か変わる"キッカケ"か"誰かの存在"があったみてーだな!」


 そう言うと、ガクはチラッとナナに目をやった。


「まぁ、いづれにせよ、いいじゃねーか!! その夢、大事にして、頑張れよ!!」


 ガクは通路の真ん中に立って両手を広げた。両脇には"森物語"がずらーっと並び、その全台に人が座り、楽しそうに遊戯をしている。


「ほらっ! おれを超えるくらいたくさんの人たちを楽しませてみろよ! 楽しみにしてるぜっ!」


 ガクはイツキの挑戦心を煽るように笑い、拳をイツキに向けた。イツキはそれに応えるように己の拳をガクのそれにぶつけた。


「お、そうだそうだ! おれはもうホテルに戻るからよ、勝った出玉、2人にあげるわ!」


 ガクはシャツの胸ポケットから出玉カードを2枚取り出し、イツキとナナに1枚づつ手渡した。


「父さんはやっぱ強いね! ありがとう!」


「えっ、そんな…! いいんですかっ!?」


「いいってことよっ! これが本当のお年! なんつってな!笑 朝までにその台の"プレミア演出"引けることを願ってるぜ! それじゃ、若者たちよ、楽しんでな!」


 ガクは数時間早いお年玉を残すと、後ろ向きで手を振りながら去っていった。

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