第97話:パチンコって、日本の文化じゃん!!
「あの、こないだ偶然会ったときのことなんだけど……、」
ナナが一言発した時、彩乃と麻呂は"やっぱり!"と思った。
「わたしさ、パチンコとかスロットとかやってるんだよね。やってるというか、、パチンコとスロットが好き。大好きなのっ。」
黙って聞く2人の顔を見つつ、ナナは続けた。
「いや、わかるよ。パチンコはギャンブルだしさっ、お金も使う。"ギャンブル依存症"なんてのもあるよね。だから、やめておきな!って言いたいのもわかる。わかるよ……。でもね、それでもね、わたしはパチンコが好きっ!!」
ナナが一生懸命に話す声を聞いているイツキは、じわーっと自分の心も熱くなるのがわかった。遠くにいるナナに受話器越しから"よく言った!このままがんばれ!"とエールを送った。
ナナはそのエールをたしかに受け取ったかのように、話のギアを一段上げた。イツキを含め彩乃も麻呂も、ナナの言葉により力がこもったのを感じた。
「パチンコはね、すっごく面白いのっ! ほんとにほんとに面白いんだよっ! この時代を生きているみんなが、それぞれの場所でそれぞれのやり方で何かを頑張っている。決して楽じゃない、大変な毎日を送っている。その中で、パチンコっていうのは、すぐにでもワクワクできる非日常へ連れていってくれる。誰でも楽しめる、誰でも熱くなれる。もちろん、のめり込んだらダメだけど、それは何事も同じ。上手に付き合いさえすれば、人生を楽しく演出してくれるものだと思うんだっ! それにね、それにねっ、パチンコはアニメを題材にしたものがたくさんあるんだけどね、、」
ナナのギアはいつの間にか6速へ。オーバーヒートをするのではないかというくらいの勢いだ。ここからは、イツキにもナナが何を語り出すのかわからない。
ナナがパチンコに対して"好き"以上にどんな想いを持っているのか気になり、イツキはこれでもかというほど電話にかじりついた。スマホを強く当てすぎて、耳が痛いくらいだった。
「わたし、アニメ好きじゃん? だから、気づいたんだけどね、、やっぱり、アニメって言ったら、日本じゃん? んでね、実はパチンコがこんなに盛んなのって日本だけなの! ってことはさ、、パチンコって、日本の文化じゃん!! 日本が世界に誇るアニメコンテンツ、ゲームテクノロジーや演出技術。それが、大の大人でも本気で熱くなれる日本独自のギャンブル要素と融合してるわけっ! これってもう、日本でしか体験できない、日本ならではの究極のエンターテイメントじゃん!」
ナナは、そう言い放って、一呼吸とった。
疲れていないのに、膝って笑うんだな、、とイツキは再びふるふると震える足を押さえながら、"たしかにそうだ!!"と公園でひとりガッツポーズをキメた。イツキはナナの言葉によって、自分自身や父の仕事も肯定されている気がした。
ナナは少し声のトーンや勢いを落とした。一方で、ナナは浴衣の裾をこれまで以上にぎゅっと力強く掴んだ。
「でもね。わたしは、2人のこともすっごく大好きで大事なの。パチンコっていう"物事"と"人"とを比べるのにちょっと違和感を感じるかもしれないけど、わたしの中に優劣はない! だって、両方とも大好きなことに変わりはないからっ! これまで何百億年という時が流れていて、その中で何十億人という人たちが生きているというこの世界があって、たまたま同じ時代に生まれ、巡り合い、親友として大好きになれた。 これって、ガチでやばくないっ!? まじで奇跡だと思うっ! 思えば、2人やパチンコだけじゃない。家族もモデル活動だってそう。 奇跡的に巡り会えたものだからこそ、ひとつでも奪われたら、わたしじゃなくなっちゃう気がする。 世間はさ、大事な物事や好きな物事に優劣をつけたがる傾向があるよね。"家族"と"仕事"、どっちが大事なの? "友達"と"恋人"、どっちが大事なの? "部活"と"勉強"、どっちが大事なの? って、そんな風潮があると思うの。でもさ、そこに優劣を決める意味なんてあるのかなっ? 自分にとってそれが本当に大事なら、どうしようもないほど好きなら、どっちも愛を持って大事にすればいいじゃん! 少なくとも、わたしは全部大事にしたいっ! "わがまま"って言われるかもしれないし、"すべてを平等に愛すなんて無理だ"と思われるかもしれない。それなら、すべてを大事にする努力からはじめればいいっ! そう思ってる。」
「「…………」」
「……えっとね、だから、そんな一面もあるわたしだけど、、彩乃と麻呂には嫌いにならないでいてほしい…。」
ナナが発した言葉にあらかじめ用意していた台詞なんて、ひとつもなかった。紛れもないナナの感情と想いの欠片たちが口を開くたびに言葉になり紡がれていった。
「ナナっ! ちょっと待ってっ!」
ナナの話を一通り聞き終わった彩乃が口を開いた。ただ、その口調は少し強めであり、部屋の雰囲気が変わった。電話越しに聞いているイツキには彩乃が怒っているようにも聞こえた。
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