常識

輝空歩

常識。


「常識とは、自分の抑えるために飲むべき毒である。と」

「そうだと思うのだよ。」


数年か前の同窓会の時、世間から離れ、おかしく不合理な生き方をしていたある友達から言われた言葉だ。


「毒を飲んで自分を無害なものにして楽しむのも一つだけど、毒は飲みたくない。苦いし、物忘れがひどくなる。」


彼はビールを手に持ちながら、そう語った。

泡がやまないビールグラスには、彼の赤いリボンが薄っすらと映っていた。



・             ・                 ・



ああ。


なるほど。毒とはこういう事なのか。やっとわかったよ。子供になりたかったな。

脳内で遺言を残し、彼(最後となった同窓会から10年後、の)は

本物の毒を、のどに流し込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

常識 輝空歩 @TS_Worite

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ