湿度


私にそう話しかけてきた破片の形は人だ。人の中でも『少女』と呼ばれる歳の女の子の姿だった。


「貴方は......誰? 表裏ちゃんって誰なの?」


私の問いに少女の形をした破片は首を横に傾げた。両者共に相手の言葉にハテナマークを頭上に浮かべていた。


「何を言っているの? 表裏ちゃんは貴方の事よ......?」


そう言い少女の形を破片は今にも割れそうな破片で造られた指先で私の事を指さした。


「私......?」


思わぬ回答に私は眼をギョッとしてしまった。


破片の少女が言うには私は『表裏ちゃん』らしい......だが私はそんな名前じゃない。私は____


「私の名前は『晶故しょうこ』よ。表裏じゃない」


そうだ。私には既に名前がある。『晶故』という名が。

だがその言葉を聞いた破片の少女は再び首を横に傾げる。


「何を言っているの表裏ちゃん? 何で私の名前を自分の名前だって言っているの? もしかして寝ぼけてる?」


な、何を言っているんだ? 私の名前を自分の名前のだって言っているの? でも私は......


「だって、私の名前が硝子しょうこなんだよ......? 大丈夫? 表裏ちゃん?」


私は......


「晶故だ......」

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