『無機物』と『有機物』
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「
私の名前を呼ぶ声が聴こえる....ご飯....?しばらく摂ってないな....まぁ私には必要の無い事だ。食事なんてただの食欲を満たすだけでそれ以外特にメリットが無く、正直言って時間の無駄でしかない。
この声は体感五時間おきに聴こえてくる....が、私は一度もこの声に満足のいく
最初の呼び出しからしばらくして、また同じように私の事を呼んだ。
「晶故ー! ご飯ー! ....はぁ、"まだ"視ているのね...."あの世界"を....私はもうとっくに諦めてるけど、よく
よく
私は(そんな言葉を言い続けてる時間があるならちょっとは自分自身も努力すべきだと思うけどなぁ....)と、心の中で呟いた。ま、考え方が違うやつといくつ喋っても無意味か。それよりも私はさっき声が言ってた"あの世界"に眼を向けてたい。
そう、今、私が居るところ。それこそ正に"あの世界"に通ずる扉がある部屋である。
扉があるこの部屋の構図はそこまで複雑じゃなくて、そこら辺のマンションの一室って感じ。部屋の中心に扉がぽつりと置かれているだけである。それ以外は本当に引越ししたばかりの部屋って感じで何も置かれていない。
唯一部屋に置かれている扉は置かれている位置を除けばただの普通の扉って感じだ。だが、その扉は普通そうに視えるが私だけだろうか、なんだか私という存在を百年前からずっと待っていたかのように普通では無い佇まいが扉からは溢れんばかりに漂っていた。
私はこのヘンテコな部屋に自分から進んで入った訳では無い。気がついたらこの部屋に居た。
私は淡い期待を込めながら扉に問う。
「ねぇ、もしもさ、私のここに来るまでの経緯とかが貴方の先にあったりする?」
まぁこんな事を無機物である扉に言ったところで意味が無いか....そう思ってたら......
※そういう事も出来ますよ。何故なら私はそんじゃそこらの扉じゃないので。ですがその過程で伴う"残酷な運命と真実"には"決して"眼を背けない事を約束してください。いいですか? これはただの無機物として貴方が見下していた私と貴方の契約でもあるのです。人外と契約をするとはどういう事か、今一度貴方の"冷たそう"な胸に手を当てて考えてください。と、扉に言葉が浮かび上がっていた。それはまるで扉自身が"生きてるかのように....喋ってるかのように見せる様に....
だが、私は扉の出した契約内容に迷うこと無く、扉と契約を交わした。ここに人類史上初の『無機物と有機物の契約』が成立した....いや、してしまったと言うべきかな....
私は扉との契約を果たした後、すぐに自分の手の中で握力が強い右手でドアノブを握り、扉を開けた。そして____扉の先に広がっていたのは......
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