第20話 bestfriend
放課後の図書室
中に入ると生徒が数人いた。
葉月は植物の図鑑を手に取る。
赤羽祐斗は適当に本を一冊手に取る。
そうして、隣同士に座ってページを捲っていく。
僕は植物の図鑑を読みながら、小声で口を開く。
「本を読む時の文月、すごい綺麗だよね。愛しそうにページを開いて宝物のように扱う。君が文月を好きになった理由はわかるよ」
祐斗は本を読みながら答える。
「だから、何ですか?」
その言葉に微かな苛立ちが入っている。
「だけど、文月は君の母親じゃない。」
目を見開く祐斗
「そんなことは」
分かってますとは言えなかった。実際に母親の面影を求めていたからだ。
年上の女性を遊び相手に選んでいたのも、その影響だったんだ。
ページを捲る手がとまる。
図書室に文月と真由が入ってきた。
テクテクと葉月と祐斗が座ってる場所に座る。
祐斗によって葉月のことが好きと知られた真由は、若干居心地が悪そうな顔だ。
「赤羽君...正直に言うと、私は放課後の図書室で楽しそうに本を読んでるあなたを好ましく思っていた時もあるわ。だけど、それは恋ではなく本好きの同志を見つけたような想いだった。」
「文月さん」
鞄からmotherの本を出す。
「この本の年下の主人公に惹かれた女性も、きっとそういう想いだったんじゃないかしら?」
優しく微笑む文月
「祐斗君、お父さんとお母さんがいつでもいらっしゃいと話してたよ。祐斗君のこと自分の子どものように思ってるて...また、一緒にご飯食べよう?」
葉月は笑みを浮かべる。
「僕ら友だちになれるんじゃないか?君が読んでる本のタイトルのように」
『bestfriend』
3人の言葉に祐斗は一筋の涙が零れた。
(そうだ。僕が欲しかったのは取り戻したかった自分が安心できる居場所だった)
「はい..」
祐斗は3人に謝罪して、bestfriendを借りて図書室から出ていく。
bestfriendは母親の束縛から解放されて、再スタートしていく話。その中でかけがえのない友と出会う物語。
(今の彼にぴったりね)
「文月、この図鑑借りるよ」
「私は恋愛小説」
「二人とも貸し出し表に名前を記入してね」
葉月と真由に指示を出す。
文月は夕日が差し込む放課後の図書室を眺めて微笑んだ。
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