第6話 トルメル建国記念祭

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 サンポアスティ国 女王の間 別名ライオン宮


 あの大戦から雨が降るようになった国。サンポアスティ国。今では、この国には床の水面に水流が迸り、天井から雨がしとしとと降り注いでいた。蔓で覆われている外廊下へと繋がる噴水の水路には、13頭のライオンの銅像が石敷きの上に並んでいる。女王の傍に寝そべっている生きたライオンが二匹とも寝息を立てて眠っていた。元来はここは女性専用で近衛兵も大使ですら入れない場所といわていた。 


 女王の御前には、御膝元の家来以外に、枝や葉でできた服装の重臣たちの姿があった。


「陛下……北の館からの魔族の襲撃が、遥か南のこの国まで及んでいます」


 重臣の声は震えていた。

 その上、落ち着きなくそわそわとしている。

 

「さようか。ラピス城の鬼窪は……動いたか?」

「いえ、目下様子見のことで……」

「なら、こちらも様子見といこう。今は兵も大事。時機を待つのも必要ということだ。トルメル城とクシナ帝国に任せていればよい」

「ははっ……仰せのままに」


 重臣のもう一人が前に出て具申した。

 

「陛下……これは、眉唾物なのですが……お耳に入れたく存じます。北のトルメル城に勇者が現れたと申し、何やら我がサンポアスティ国はおろか他国の城下町が騒いでおります。それゆえ今年のトルメル城の健国際には、その勇者が姿を現すとか……」

「ほう、ほう。それは面白い」

「陛下。ただの噂かも知れませぬ」 


 別の重臣がいった。


「それでも、一度はそやつを見てみる価値はあるな。その勇者の名は何と申すのだ?」

「はっ! 秋野 憲一という異世界人です」

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