第7話
どこまでも真っ暗な世界が広がる夢の中で目を覚ますと、弥生は誰かに膝枕をされていた。
時折冷たい手が弥生の頭や髪を愛撫し、熱を発する身体に氷のような冷たさが染み入る。それが心地良くて身を委ねていると、やがて額に唇の感触を感じたのだった。
(誰……?)
その衝撃で目を開けたものの、周囲の暗闇に紛れて相手の顔ははっきりと見えなかった。それでも口付けてきた相手が膝枕の主だというのは不思議と分かったのだった。
薄っすらと見えるシルエットから膝枕の主は男性のようだったが、膝枕をしてくれるような相手に心当たりは無い。都合の良い夢でも見ているのだろうか。
誰なのか尋ねようと弥生が口を開いた時、先に声が聞こえてきた。
『……を頼んだ』
球体を見つめた時に耳の奥から聞こえてきたのと同じ若い男性の声が頭上から聞こえてくる。あの球体に宿っていた若い男性が弥生を膝枕しているのだろうか。
(あなたは、いったい……)
口が渇いて舌が回らないが、弥生はどうにか言葉を発する。
「もう一度、言って?」
『おれの代わりにアイツのことを頼んだよ。
「アイツ……? きゃあ!?」
弥生が尋ねた瞬間、二人を中心に突風が吹き荒ぶ。身体に滞留していた熱が徐々に引いていき、夏の日のお風呂上りに冷風に当たった時と同じような快感を覚える。心なしか、今まで重く感じていた身体も軽くなったような気がしたのだった。
『おやすみ……。今はまだ……』
その言葉を最後に弥生は夢現の中で微睡むと、再び目を閉じたのだった――。
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